四畳半トリップ~《アズカバンの囚人》起~【ハリー･ポッター】 (ページ11)

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『教授、教授、教授』と楽しげに呟いて、私はクィリナスのため息を聞き流した。

私は教授に愛を贈るが教授は私に愛を突き返す、果てにはそこら辺に私の愛を投げ捨てる。

そんな扱いを受けながらも私は贈った愛をすくい取り、また彼に送り続けるのだ。

彼のことを好きになった日のことはもう忘れた───しかし、何があっても好きなのだ。

恋は美しく、孝も美しい、忠君愛国も結構だろう。

しかし自身がその点に当れば利害のつむじ風に捲き込まれて、うつくしき事にも、結構な事にも、目は眩んでしまう。

私はこの夏休み、ずっと教授に帰りを待った。

切ないことにどう考えてみても、この私の恋は負け続けている。愛を捨てる日も遠くない。

ここまで来るとまだ捨てないのもおかしいと思われるかもしれない。

私は薔薇色の夏休みライフを送って貰うために、まさに薔薇色の言葉ばかり書き連ねた手紙をクィリナスに渡した。

『これを教授に届けて、クィリナス』

「そんなの、あなた」とクィリナスは苦々しい顔で私の手紙を見た。

クィ「梟を使えばいいでしょうに」

『移動薬を試して欲しい、っていう思惑もある』

「あなた、思惑がただ漏れですよ」とクィリナスは乱暴に手紙を受け取って、移動薬を一瓶手に取った。

クィリナスは断れない、何があろうとも。

何しろ彼には山よりも重い負い目があり、その重みに日々打ちひしがれる彼は口をへの字にした。

私ごときが加勢したところで恋が華々しく逆転するとは思わなかったのか、クィリナスは文句のひとつも言わない。

私はあたかも私の部屋から逃れ出るように去るクィリナスの後姿をちらりと認めただけであった。

〇

ホグワーツに来てから約二年ほど恋の戦いを行ってきた訳だが、言わずもがな勝てる見込みは少ないことは言うまでもない。

しかし見返りの求めない私の恋は教授へとひた走り、ひた走りすぎて、教授にぶち当たってしまうが、教授は屁とも思わない。

前の世界ではそれなりに薔薇色であった私の脳味噌が暖色を失い、教授の壁に私は頭を悩ませるていることは語らずともわかるだろう。

そうは言っても、語るほどはないし、そんなことをして読者へ言っても、虚しい共感を求めるだけだ。

そうしてクィリナスが教材を買ってきている今、私はダイアゴン横丁に行かなくても良い。

しかし私は行きたい。

そうするにはリドルも連れていかねばなるまい。