手記拾参頁目 ページ15
狛治side
いつも恋雪さんの身の回りを世話し、笑顔を絶やさないAさんが今日は珍しく何処か元気が無かった。
恋雪さんが『花火大会』の話をしてから、いつも楽しげに恋雪さんと会話してるAさんがぼーっとしながら月を見上げていた。
微かにその瞳がいつもより潤んでいるように見えて、恋雪さんが寝静まった所で寝ることになり、自室に戻ったあともなんだかそわそわしてしまった。
もし、Aさんが一人で泣いていたら。
夜更けにも関わらず、布団から出てAさんの部屋に行こうとすると、先程三人で並んで座った縁側に目を閉じて上を向いているAさんの姿があった。
寝間着姿で月明かりに照らされるAさんの頬には光る雫が一筋の線を作っていた。
直ぐにでも駆け寄っていきたかったが今は夜更け、しかもここは恋雪さんが襖1枚を隔てた所で眠っている。
Aさんの名前をそっと呼んで隣に座るのは気恥ずかしくて、あたかも二人の間に恋雪さんがいるような人一人分の間隔をあけて俺も縁側に腰掛けた。
『いいえ、ただ眠れなくて。』
そうやって無理して弱々しく笑うAさんはとても儚げで目を離してしまうと何処か遠い所へ行ってしまいそうだった。
何処か俺の知らない遠い所へ行かせなくてAさんの小さな両手を強く握る。
Aさんの目をしっかりと見ながら話すも、目線を逸らされて言葉もはぐらかされてしまう。
狛「俺を、頼って下さい。……Aさんの辛そうな顔を、見たくないんです。」
そう俺が言うとAさんは暫く目を見開いて、それからぽつぽつと話し始めた。
『怖いんです……。あの人混みが。また大切な人を失くしてしまう気がして……』
小さい頃恋雪さんと親に内緒で家を抜け出し花火大会へ行った事。
帰り際に恋雪さんとはぐれてしまったこと。
あともう少しで掴めた手が掴めず空をきったこと。
小さな子供がそれを体験すれば確かにトラウマになってしまうだろう。
出来事を話していく内に段々とAさんの瞳から大きな雫が零れ落ちて言った。
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主人公(プロフ) - まゆまゆさん» 本作品を見つけて頂きありがとうございます!私も映画見る前はそうでした笑是非ともこれからもご愛読頂けると嬉しいです(^^) (2021年3月26日 15時) (レス) id: b1a69e75f8 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - やぁ〜、猗窩座とのお話しを探して三千里(はっ?)なかなか書いてらっしゃる方居なくて、見付けたら嬉しくて善逸みたいに汚ない高音でイィヤァァァア〜状態w自分無限列車何も知らずに観に行って猗窩座の第一声で石田彰さんて解って涎垂らしそうな程で、幸せ (2021年3月26日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
主人公(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます。やっとこさ1を書き終えました。続編も近日公開致しますので是非ともこれからも応援お願い致します! (2021年3月18日 18時) (レス) id: 1c0023d245 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 初めまして!この作品大好きで、ずーっと更新をお待ちしてたので嬉しいです!!!はくじさんと早く会えますように( ; ; )最後どうなるのか気になります!! (2021年2月21日 7時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白くて大好きです!更新頑張って下さい! (2021年1月9日 5時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
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