手記拾弐頁目 ページ14
今日は慶蔵さんが帰らないというので私もここで泊まることになった。
恋雪ちゃんが寝静まって、狛治さんも自分に充てられた部屋に戻り、私も恋雪ちゃんに何があってもすぐ駆けつけられるように襖一つ隔てた所に布団を敷いた。
けど、花火の話をしてから心がどうもざわついている。
布団に潜っても、目を閉じてもそれが落ち着くことはなく結局起きてしまって縁側に戻ってきた。
先程より天高く昇っている月を仰ぎみて目を閉じる。
聞こえるのは虫の音と自分の呼吸音だけの静かな世界だった。
狛「Aさん。」
突然として聞こえた声に体を強張らせる。
『は、狛治さん……』
寝間着の狛治さんが廊下の奥の方から此方に歩いてくる。
狛「どうしたんです?こんな夜更けに外へ出て。」
狛治さんはさっき三人で縁側に並んで座ってきた距離の所にゆっくりと座った。
『いいえ、ただ眠れなくて。』
そうやって無理矢理口角をあげて笑うと、突然狛治さんは人一人分の距離を縮めてきて、両手を掴まれた。
狛「嘘、つかないで下さい。」
狛治さんは、不安気に此方を伺いながらも真っ直ぐに私を見つめていた。
狛「先程、恋雪さんから『花火大会』の話題が出てからAさんの様子が可笑しくなったの……気付いています。」
狛治さんはそう言うと握っている私の両手に目線を降ろした。
狛「俺を、頼って下さい。……Aさんの辛そうな顔を、見たくないんです。」
狛治さんの真っ直ぐな視線に『大丈夫だ』と言い訳しようとしていたのに、口は違う言葉を紡ぎ出した。
『怖いんです……。あの人混みが。また大切な人を失くしてしまう気がして……』
狛治さんが私を真っ直ぐ見てくれているように私も狛治さんに負けないように見つめ返す。
だが、どんどんあの出来事を詳しく話していく内に視界の狛治さんは歪んで言葉が嗚咽に邪魔されて言えなくなっていく。
その次の瞬間、私は温かな温もりに包まれた。
狛「大丈夫です。俺が絶対にAさんの手を掴みます。……絶対に離しません。だから、泣かないで下さい。」
耳元でそんな言葉が囁かれ、私は救われた気がした。
私は、その後落ち着くまで力強く抱き締めてくれる狛治さんの胸の中で声をあげて泣いた。
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主人公(プロフ) - まゆまゆさん» 本作品を見つけて頂きありがとうございます!私も映画見る前はそうでした笑是非ともこれからもご愛読頂けると嬉しいです(^^) (2021年3月26日 15時) (レス) id: b1a69e75f8 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - やぁ〜、猗窩座とのお話しを探して三千里(はっ?)なかなか書いてらっしゃる方居なくて、見付けたら嬉しくて善逸みたいに汚ない高音でイィヤァァァア〜状態w自分無限列車何も知らずに観に行って猗窩座の第一声で石田彰さんて解って涎垂らしそうな程で、幸せ (2021年3月26日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
主人公(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます。やっとこさ1を書き終えました。続編も近日公開致しますので是非ともこれからも応援お願い致します! (2021年3月18日 18時) (レス) id: 1c0023d245 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 初めまして!この作品大好きで、ずーっと更新をお待ちしてたので嬉しいです!!!はくじさんと早く会えますように( ; ; )最後どうなるのか気になります!! (2021年2月21日 7時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白くて大好きです!更新頑張って下さい! (2021年1月9日 5時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
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