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伍拾壱──ももばら ページ6

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 結果から言うと、二人は“水狐(みずぎつね)”として活動することになった。由来はというと、“水”は水の呼吸の使い手だから、“狐”はAも狐の面をつけることになったから、だ。さすが耀哉、名づけのセンスがある。
 というのは、産屋敷家の和室で細かい決まりをとりつける際、Aがこう発言したのである。
「私、女やめる」
 錆兎はまったく意味がわからず、
「は? どういうこと?」
「だから、男になる」
 Aの目はまっすぐだった。彼女はどうにかして“長女”から逃げだしたかったのだ。淑女になんてなりたくない、自由に駆けまわりたい。それが今、叶おうとしている。チャンスが手の中にある。握らないなんてありえなかった。
 それに、彼女はなにかと顔を知られている。隠すにも面はちょうどいいのだ。
「じゃあ、偽名を考えないとな!」
錆兎はわくわくしているらしい、にっこり笑ってAを見る。
「かっこいいやつがいい」Aが言うと
「うーん……水の呼吸の使い手だから、(たき)(りゅう)?」
「なにそれ!」
 錆兎のネーミングセンスはあてにならないと察したAは、知るかぎりのおしゃれな言葉をひっぱりだす。そして、つぶいた。
「……琥珀(こはく)瑪瑙(めのう)
「え?」
「琥珀と、瑪瑙! どうかな、宝石の名前なんだけど」
錆兎の髪色、琥珀の色に似てるの、とつけくわえる。
「琥珀と瑪瑙……」錆兎はよく吟味し「うん、いいかも! かっこいい!」
「だよね! じゃあ決まり。よろしくね、琥珀」
「ああ、よろしく、瑪瑙」
あらためて握手をした。
「うまく決まったようだね」
 席を外していた耀哉が戻ってくる。錆兎がうなずいて
「はい、俺が琥珀で」
「私が瑪瑙です」
 いいね、よく似合うよ、耀哉のお墨つきをもらい、いよいよ二人の水狐としての日々が始まろうとしていた。


桃バラ──しとやか、上品、感銘

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設定タグ:鬼滅の刃 , 錆兎 , 長編   
作品ジャンル:恋愛
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Rabbita(プロフ) - kokonaさん» とてもうれしいです、ありがとうございます。一ヶ月に一度の更新をつづけていけるように尽力いたします。今後ともよろしくお願いいたします。 (2023年4月13日 2時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
kokona(プロフ) - 投稿楽しみにしていました! (2023年4月8日 12時) (レス) @page39 id: d3088186d6 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます。 (2022年12月19日 19時) (レス) @page36 id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
かおり - よかったです!これからも更新楽しみにしてます! (2022年10月22日 18時) (レス) @page35 id: bc17a1db16 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ご心配ありがとうございます、ただいま更新させていただきました。「待ってます」とのお言葉に本当に救われました。不定期ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。 (2022年10月16日 15時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Rabbita | 作成日時:2022年1月1日 19時

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