伍拾陸──みせばや ページ11
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「ああ、それと。俺が生きてるってことは、義勇には伝えないでください」
錆兎が真面目顔で言った。Aもつづいて
「私も、村田さんには秘密でお願いします」
「それはまた、どうして」
寧時が首をかしげた。
「義勇は自分に自信を持ってないんです。ちゃんと強いのに、俺と比較して弱気になってる。だから、これからは自分の力で道を斬り開いていってほしいと思って」
「私も、錆兎と一緒に活動するために、同じ状況に身を置きたいんです」
「……わかった」
二人の承諾を得、Aと錆兎は気をひきしめた。
「Aさん、この人ってしょっちゅうかっこつけるし、でもたまに天然ぽくなるし、変なところでぼけてくるけど、本当はすっごく優しくていい人だから。どうか見捨てないであげてください。よろしくお願いします」
これまで静かにしていた真菰が両手をつく。すかさず錆兎が、
「は、お前、真菰!」
「ほめてるのになんで怒るの?」
「後半のひとことだけだろ」
にやにやとからかう真菰。Aはしとやかに笑って、美しく頭を下げた。
「こちらこそ。よろしくお願いします」
呼びすてでいいよ、とつけくわえる。そのほんわかとした空気に、しかめっつらの男の低い息が響いた。
「錆兎とかいったか、お前がAちゃんと一緒に行動するんだよな」
寧時が睨みを利かせる。錆兎は委縮して姿勢を正した。
「は、はい」
「俺はなあ、ひっじょーうに不服だ。そりゃあもう、非常が異常でとんでもないほどに不服だ。お前はAちゃんを守れるのか?」
「え、ちょ、ちょっと師匠! 守るって、私はそんな弱く──」
Aの否定をさえぎるように、どでかい声が耳を貫いた。
「はい!!! 絶対に守り抜き、幸せにします!」
「方向性! あの、話の方向性が!」
ツッコミが追いつかないのを見てか、冷静な最年長が咳ばらいをした。
「儂はさっそく面を作る。二週間でしあげなければならないからな。真菰、行くぞ」
「「ありがとうございます!」」
失礼、と二人の姿が消え、錆兎と寧時はふたたび言いあいを始めた。やはり話の展開が速くてついていけない。
「ああもう、助けて村田さーーん!」
Aの声が広い空に響きわたった。
ミセバヤ──つつましさ、平穏、大切なあなた
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Rabbita(プロフ) - kokonaさん» とてもうれしいです、ありがとうございます。一ヶ月に一度の更新をつづけていけるように尽力いたします。今後ともよろしくお願いいたします。 (2023年4月13日 2時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
kokona(プロフ) - 投稿楽しみにしていました! (2023年4月8日 12時) (レス) @page39 id: d3088186d6 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ありがとうございます。 (2022年12月19日 19時) (レス) @page36 id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
かおり - よかったです!これからも更新楽しみにしてます! (2022年10月22日 18時) (レス) @page35 id: bc17a1db16 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbita(プロフ) - かおりさん» ご心配ありがとうございます、ただいま更新させていただきました。「待ってます」とのお言葉に本当に救われました。不定期ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。 (2022年10月16日 15時) (レス) id: 107e758410 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rabbita | 作成日時:2022年1月1日 19時