鬼殺隊最強の二人組・水狐 弐ノ巻《錆兎》

伍拾伍──かきつばた ページ10

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　翌日、Aと錆兎はそれぞれの育手と真菰を一部屋に集めた。この半年間のできごととこれからについて詳しく説明するためであった。
「まずは俺から、藤襲山で起きたことについて説明します」
　錆兎は輝哉に話したときと同じく自分たちの身に起きたことを事細かに話した。育手たちは二人の生命力と実力に驚嘆し、また生還したことをあらためて喜んだ。
「つづいて、僭越ながら私から今後についてお館様ととりきめたことを申しあげます」
　産屋敷家を訪れたことは昨日のうちに話してあったので、とくに驚きはない。輝哉の直属の部下として水狐という二人組で活動すること。狐の面をつけている間は偽名で呼びあうこと。
「そこで、鱗滝さん、Aのぶんの厄除の面を作ってもらえませんか」
「お願いします」
　頭を下げると、ううん、とうなる声が聞こえた。
「容易に二つ返事はできない。これは厄除の念をこめて弟子のために作ったもの。失礼ではあるが、よく知っているわけでもない子供に渡すのは気が引けるな」
　しかし、二人は引き下がらない。
「私はこれからずっと、鬼の始祖を討ちとるまで、錆兎さんとご一緒します。ですからどうか、お願いいたしたいのです」
「俺からもお願いします」
　錆兎も頭を下げた。やや間があって、
「……そこまで言うのなら」
　お面のせいで表情は読めないが、声を聞くかぎりは柔らかい顔をしているに違いない。Aと錆兎はおたがいを見、やったあ、と笑った。


カキツバタ──幸福が来る、高貴、思慕、贈り物

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