口に出せないその言葉を君に贈ろう。 ページ24
ーー調子を取り戻そう。
何てこと無い、簡単だ。いつも通りの顔でいつも通りの調子でいればいい。
ど派手くんに記憶が戻ってたことを言う前に、少しだけ巫山戯よう。巫山戯てそして私はきっと笑う。そしたらこの重々しいーーらしくない空気は終わる。
「___…だから。まさかこんなに好きになるなんて思わなかったわ」
は、と言葉を発する筈の唇が震える。なんで、と思った。
まるでその言葉は毒のように体を蝕む。息ができなくて視界が霞む。それでもいつも通りに演じなければならない。
誤魔化した。ど派手くんの好意に気付かない振りをして。
『あ、そういえば"宇髄さん"。一ついい忘れてたよ』
「?なんだ?」
『記憶が戻ったんですよ、"ど派手くん"』
本当はここで笑う筈だった。いやぁ、見事なままに騙されてましたね。と言うつもりだった。もう、笑えなかった。
「…………は、」
いつも通り何てこと無い顔で言う。話は終わりだともいうように、じゃあ、と手を振ろうとする。でも、その前に腕が引っ張られた。
ど派手くんに、抱き締められる。強く抱き締められてかなり、いやとてつもなく痛い。嗚呼骨が折れそうだよ(いや本当に)
ど派手くんは離さない。それどころか、どこか様子がおかしい。
『どうしましたか、ど派手くん』
純粋に気になった。すると、暫くしてから返事が返ってきた。
「……………………会いたかった……………」
何時になく弱々しい声。いつもの元気な所はどこにいったんだろうか、と思う。嗚呼でも、ここなら、抱き締められる間は顔は見えないから、ならば、それならば、
もうそろそろ、泣いても、いいだろうか。
Aは唇を強く噛み締める。顔は歪んで目からは一筋の涙が零れ落ちる。
悲しそうに。悔しそうに。虚しそうに。手を伸ばしたげに。何かを諦めたように。何かを諦めたくなかったように。
想いが、想い出が、眩い光の涙となって溢れて落ちていく。Aの目から零れ出る。
『________』
言おうと思った。言いたかった。虚しい心を埋めてくれた君らに。君に。ど派手くんに。
それでも言えなかった。言ったらもう、離れられなくなると思った。気持ちが揺らいでしまうと思った。
ひと月、ふた月ぐらいだろうか。
私はもうすぐ死ぬ。
ーーーねぇ、ど派手くん。
心の中で思う。口には出せない。一度だけ、呟く。
私も、会いたかった。
[期間限定中編集]湯気に浮かぶ恋心→←甘いような苦いような君の言葉。
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ひいらぎ・いろ - 小冬さん» ありがとうございます、いつも小説を書く度に面白いか凄い不安になって、、そう言ってもらえて凄く凄く励まされます!これからも頑張ります! (2021年5月2日 7時) (レス) id: 3d1bfbcbe7 (このIDを非表示/違反報告)
小冬 - とっっても、面白かったです!!もう、夢主の反応とかがめっちゃ面白くていつも思い出して笑っています!!これからも頑張って下さい!! (2021年5月1日 23時) (レス) id: b394ae1541 (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ・いろ - S_t0606さん» コメントがきたことにはしゃぐ人間はこの世にはいます。(ありがとうございます!)なるほど、、確かに夢主よく宇髄さんといますから、、もしかしたら、、? (2020年11月29日 20時) (レス) id: 79b860e9e4 (このIDを非表示/違反報告)
S_t0606(プロフ) - 宇髄さん宇髄さん宇髄天元様で落ちお願いします (2020年11月29日 17時) (レス) id: 3664f0360e (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ・いろ - 氷華さん» まさか続編にいけるとは、、(←亀更新人間)こちらこそ、よろしくお願いします! (2020年11月14日 21時) (レス) id: 79b860e9e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひいらぎ・いろ x他1人 | 作成日時:2020年11月13日 0時