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新しい色を塗る度「もっと明るい色が良いかも」「それも似合うね」「やっぱりあの色も試してみたら」とコメントする清光。
コスメカウンターの店員さんたちは皆「彼女のことが大好きなのね」と褒めていた。
化粧っ気の無い私は初心者向けメイクを教えてもらい、清光はさりげなくプロの技を目で盗む。
「彼氏くんのためにお化粧頑張ってね」とサンプル一式を貰った私は、デパートを出ると、全てを清光に渡した。
そして久しぶりに私の部屋に行き、鞄をベッドに放り投げると、着替える間もなくメイクが始まる。
「やっぱり真衣は、この色にして正解だったな」
折り畳みテーブルの上にメイク道具と鏡を並べる。
一体何種類あるのか。
清光はプロにも劣らない数の道具を揃えていた。
美容部員さんに教えてもらった技を駆使して、彼は手早く丁寧に、私の顔を作り上げていく。
「伊口と違う色にしたかったけど、やっぱりコレが1番発色が綺麗。
これに合わせるなら、この前買ったタイトスカートが良いかも。
そしたら今日は、髪もあまり巻かずに艶を出して・・・」
この部屋に住む私よりも、清光の方がよっぽどクローゼットの中に詳しい。
「スカートにラインが出たら嫌だから」と、下着まで指定する。
清光は私の身体のサイズ変化まで正確に察知しているのだ。
今日のコーディネートを受け取り、私はおずおずと口をを挟む。
「・・・メイクは？」
「後で仕上げするよ」
「そうじゃなくて、清光が」
言われてようやく、彼は自分が普段の格好である事に気づいたらしい。
「ああ」と小さく声を漏らし、私が着替える間に、クローゼットからワンピースを引っ張り出した。
彼は私の持っている下着まで全て把握しているが、自身は女性物の下着をつけない。
そのスカートの下はボクサーパンツだ。
私にかけるよりもずっと短い時間で、清光の準備は完了してしまう。
いつも結んでいる細い1つ結びを解き、ファンデーションとアイシャドウをサッと載せただけの薄化粧で終わり。
けれど口紅を塗れば、仄かな色気を含んだ女性に変わる。
服はワンピース1枚。
それは清光のお気に入りの1着。
裾の広がった柔らかな布地に、あえて色の濃いストッキングを合わせることで、彼の脚線美を強調させている。
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作者名：井原 | 作成日時：2023年2月22日 1時
