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「清光が言うと、嫌味に聞こえるよ」
「そう？」
ふふっと笑って、彼はベッドに腰掛ける。
そしてさも当たり前のように私を膝の上に乗せ、耳元に唇を寄せた。
「真衣、触って良い？」
くすぐるようなその声がまた、蕩けそうな程に甘い。
「・・・いいよ」
頷くと、清光は私の服の中に手を滑り込ませた。
キャミソールの上から、その手が脇腹に触れる。
お臍の周りに円を描く指先がくすぐったくて、笑いながら身を捩ると、お腹の肉を摘まれた。
「少し太ったんじゃない？」
「この前、清光とケーキビュッフェに行ったからね」
「いいなあ、女の子は。
柔らかくて良い香りがして」
「このコロン、清光とお揃いじゃない」
「違う違う、女の子は元から良い匂いがする」
アイロンで巻いた私の髪に顔を埋め、清光は頸につけたコロンを探った。
ライラックの香りが珍しくて買った物だが、甘ったるさは無い。
性別を選ばない香りを、彼は気に入っていた。
今日はやけに肌寒く、背中を預ける清光の身体が温かい。
手は依然服の中を彷徨っているが、いやらしさは無い。
清光は純粋に、女の子特有の丸みを帯びた身体を堪能したいだけ。
お気に入りは、脇腹から腰にかけてのくびれたラインだ。
「真衣、胸大きくなった？」
「清光に毎日ベタベタ触られてるからね」
「じゃ、俺に感謝して」
清光に触られている間、私は極力目を閉じる。
そうすれば、この身体を撫で回す、性別を隠し切れない手を見ずに済むから。
この身体に触っているのは、赤ん坊の頃から一緒に育った幼馴染。
清光は、女の子の格好をするのが好きなだけ。
女の子の柔らかい身体が好きなだけ。
ーーそう自分に言い聞かせる。
「俺はこうやって、真衣に触れてる時が1番幸せ」
囁く度に、耳たぶにあたる唇。
下着のレースを愛おしそうに撫でる指先。
「真衣、綺麗。
とっても綺麗」
いつの間にか服がはだけている。
キャミソールの紐が肩から外され、露わになった肌が冷たい空気に触れる。
まるで壊れ物を扱うように、清光が私を、優しくベッドに横たわらせた。
軋むスプリングまでもが繊細に鳴る。
まるで女の子に襲われているみたいだ。
私の部屋は、秘密の花園だ。
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作者名：井原 | 作成日時：2023年2月22日 1時
