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突然の出来事に驚いた真衣は、目をパチくりさせながら答える。
「面倒なんて、ちっとも」
「ですが、保護者もいない子供を勝手にお店に引っ張り込むのは、どういうことでしょう。
うちの子は今日、塾をサボったんです。
こちらのお店のせいじゃないですか？
子供に甘い顔をして、親にお菓子を買わせる魂胆ですか」
「お母さんやめてよ。
玄師さんは、そんなことしないよ」
自分の手から逃れようとする真斗の腕をますます強く握り締めながら、夏菜子は強い口調で言い募る。
「こちらの店長さんが真斗を連れて来たそうじゃないですか。
親の許可もなくそんなことをするなんて。
半分誘拐ですよ」
真衣は唖然として暫く動けずにいたが、夏菜子が次の言葉を繰り出そうと口を開いた時に、ようやく声を出した。
「誘拐って、そんな」
「お母さん！
玄師さんは、僕のためにしてくれたんだよ。
かき氷だって作らせてくれたんだから」
「真斗、あなた塾にも行かないでかき氷なんか作ってたの？
あら、もうそろそりはりマナー教室の時間じゃない。
行くわよ真斗。
マナー教室はサボらないのよ」
「嫌だ！」
真斗は強く腕を振って、夏菜子の手から抜け出した。
「ねえお母さん、かき氷食べてよ。
僕、上手に作れるんだ。
世界1美味しいかき氷なんだよ。
僕、感動したんだ」
夏菜子は呆れて口を開いた。
「かき氷くらいで感動なんて、大袈裟な」
「本当だって！
ねえ、なまえ)さん。
もう1度作ってもいいでしょう」
真衣は真斗の勢いに押され、厨房に入って行く。
玄師はまたいなくなっていたが、かき氷機は調理台の上にまだ出してある。
だが冷凍庫を開けてみると、氷は全てなくなっていた。
「真斗くん、ごめん」
真斗は夏菜子を振り返ると、力強い口調で言った。
「お母さんは待ってて。
僕、玄師さんを探してくる！」
夏菜子の静止を振り切って、真斗は店から駆け出す。
自分の意志を貫こうとする真斗に驚いた夏菜子は、後を追うことも忘れ、走っていく真斗の背中を見つめていた。
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いつもの公園に、玄師の姿はない。
店に戻っているかもしれないと商店街の中を走っていた真斗は、八百屋の店先で立ち話している玄師を見つけた。
「玄師さん！」
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作者名：井原 | 作成日時：2022年11月24日 22時
