6話 ページ7
中原side
微笑むあいつの顔から目が離せない。
俺にとっての辛い過去をあいつは笑って懐かしいと言った。嘘を言っているようには思えないし、表情も作られたものでは無い。
貴方「えっと、中原さん?私の顔になにかついていますでしょうか...。」
少し見すぎてしまったようであいつは困り顔で俺に尋ねた。
中原「あ、いや。すまねえ。何もついてねぇよ。」
太宰「ああ...中也がすまないねAちゃん。なぁに、君を見つめる理由は簡単だよ。中也は君と同じだからね。」
貴方「同じ...?」
太宰の話を聞きあいつは俺に目を向ける。
太陽光で光るエメラルドグリーンの瞳とよく手入れのされた長い金色の髪。美しい。その一言に限る。
森「彼はね、君と同じく軍の研究施設で作られたのだよ。彼は試作品・甲二五八番さ。」
貴方「なるほど。そういう事ですか...。」
あいつは納得したように相槌を打った後、俺のもとまで駆け寄った。
刹那__右手に温もり。
貴方「同じ境遇の者同士仲良くしましょう!」
三宅Aは俺の右手を取り嬉しそうに笑った。
尾崎「仲良く出来そうで良かったの。」
森「ふむ...。こうしよう!Aちゃんをいつまでもここに閉じ込めておく訳にもいかない。何より可哀想だこんなに可愛いのに!!!というわけで、中原くんと太宰くんの両名、あるいはどちらかと一緒であれば外出を許すことにしよう。いわば2人はお世話係だね。」
突然任命されたお世話係。俺と太宰は顔を見合せた。
貴方「本当ですか!あっ、でもお二人がよければですが...」
こいつは俺と太宰のことを気遣うが首領に任命された限り、俺たちは断ることも放棄することも許されない。
俺たちの意思は関係ないのだ。だが、別に俺も太宰もお世話係は嫌ではない。むしろ少し嬉しい。
中原「首領の命とあらば。」
太宰「こんな美人さんのお世話係なら喜んで受けるよ!中也と一緒って言うのが気に食わないけどね。」
今はくそ太宰の嫌味も気にならないくらい笑うあいつの顔を見て、俺はなんだか嬉しくなっていた。
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