ブーケの行方（青）

未完成を祝おう ページ27

章ちゃんの部屋の壁に、大きな木が現れたのは10月頃

『ここ··賃貸じゃないの·····？』
「おん、せやで？」

なんの迷いも遠慮も罪悪感も感じられない声に、ふーん···としか反応出来なかったんだけど。
脚立まで買って、るんるんで絵の具とイチャイチャしてるから、何にも言わずにいた。
この部屋、買うのかな？



天井ギリギリまでのびた背と、悠々とのびた枝に、何色も使って描かれた葉っぱ。
よく見ると、薄い緑から、黄緑、深緑、青、黒、グレーなんかで描いてある。
カラフルな色遣いなのに、
章ちゃんが描くだけで一体感が生まれて、命が宿る




『日毎に立派になってくね、木。』

「毎日葉っぱ書いてんねん。厚みがでるし、その日しか作れん色もあるし、自然て1日じゃ完成せんやろ？」

たしかに。
１日で成り立つ自然なんてないね
章ちゃんが言うとこうも説得感があるか。
やっぱり聖母だな。



毎日来るわけじゃないから、来るたびに立派になっていくこの木を毎回写真に撮ってる。
まだ枝だけだった頃の写真と最新のを見比べるととってもおもしろい。

　
章ちゃんの部屋でまったり。
この時間が１番幸せかも。

「A今月の仕事はいつまでなん？」

『27が最終』

「結婚式ってそんな年の瀬にもやるん？」

『婚礼は26が最後だよ』

「ふーん。そうなんや。頑張ってなぁ！
あ、Aはいつでも頑張っとるか！」


そんなこといったって、あなたの方が断然忙しいですよね？？

何の仕事かは教えてもらえないけど最近毎日豪華なお弁当の写真送られてくるから局にいるんだと思う。

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