【銀魂】 吉原の遊女と鬼の話。

螺旋　土方side ページ18

「・・・ここまででいいのか？」

「ああ。」


そっけない返事。

今は夜中の１２時ごろをさし、
吉原に帰るというこの女を送った。


名や、年齢、
その他いろいろなことを聞いたが
教えてくれたのは名のみ。








「・・・礼を言う。土方。」


「ああ。A」



お互いの呼び方は少し変化したものの、

月詠と名乗る女についていくAはついぞ、



俺と目を合わせようとはしなかった。









｢・・・・おかしな女・・」





せっかく暴言を訂正しようとしたのに。







すがるような、焦るような瞳。









訂正など要らぬ。




そう言った声は、かすかにふるえて聞こえた。









・・・調子が狂う？








「・・・っんだってんだよ・・」









それはこっちの台詞だ。








遊女なんざ、ほうっておけばよかった？






｢・・・・わかってんだよ、んなこたァ・・」









なぜかAが絡まれているとき、
考えるより先に体が動いた。









抱き寄せた時に感じた、遊女特有の甘い香。






・・・まだ鼻の奥に残ってやがる。









二度目だ。
女に、思考をかき乱されるのは。







あいつはいつも笑顔で、
だが周りに無理して笑ってて、





体がどんなに辛くても、弱みを見せない女だった。



・・・あいつが…ミツバが笑うと






俺は、言葉で言い表せない気持ちになっていた。






思考がかき乱されるような感覚に陥っていた。









・・・それとはまた違う。









Aはあまりに、悲しい女。


ミツバとは対照的な無表情。


体を売る、醜い遊女。






・・・あいつの事を考えると、









どうしたらいいのか分からない、不快な感覚になる。









・・・・あいつの、あの切ない表情を思い返すたびに・・・









「・・・っくそっ！」








分からねェ。





なにも、分からねェ。









・・・と、









足元で、しゃらんと音がした。







｢・・・かんざし？」








花飾りから，
鼻に残る香がほのかに漂う。




・・・Aのもの。





何を考えるわけでもなく、懐にそれを滑り込ませる。









終わらない、螺旋のような思考回路は









・・・・甘い香の中に消えた。

抱きしめられた腕→←ついた嘘。

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