【銀魂】 吉原の遊女と鬼の話。

お墓参り ページ13

カサリと音を立てて

菊の花が石の上に置かれる。









「・・・・随分と、みじめじゃな。

…母さま。」






荒れ果てた雑草。
汚れた墓石。

かつて男相手に体を売ることを教え、
わっちを手ひどく殴りつけた母さまの墓は、みるも無残な姿になっていた。









「・・・・だれも、手を合わせに来てくれなんだんじゃなあ・・」









当然と言えば当然の結果。


わっち以外に、知り合いと呼べるものおらなんだのだから。









そして唯一の肉親さえ、吉原に売り払ってしまった。







「・・・・横の人の墓はこんなにきれいなのになあ・・・」









【沖田家の墓】



そう彫られた隣の墓はきれいに手入れがしてあり、
花もきちんと飾られていた。








沖田ミツバ、享年２４





・・・・・わっちと同い年の人が眠っているらしい。









いったいこの人はどんな人だったのじゃろうか。




なんでそんなに若く死んでしまったのじゃろうか。






何か、思い残すことはなかったのじゃろうか。






・・・・何一つわからぬが、
この人がだれかには大切に思ってもらっていたことはわかる。









「・・・・・わっちが代わりに死ねばよかったのになあ。」







どうせわっちも、母さまと同じなのじゃ。








いや、それ以下かもしれぬ。






吉原では、死んだ遊女は埋められるだけ。

墓なんてものもない。









だったら、
こんなに花を供えてもらえるような人がなぜ死んで、





死んでも誰も悲しまないものがこうして生き延びる？









菊の花の残りを、そっとミツバという人の墓に置く。





「・・・すまぬな。こんなことしかできなくて。」









そう言って立ち去ろう・・・





・・・・としたその時。









・・・・驚きと、怒りをたたえた表情の男が、
花を抱えてわっちの後ろに立っていたことに気付いた。









「・・・この間の遊女が
こんなところでなにしてやがる？」









狭いのは地下だけではなかったのか。
地上もこんなに狭いのか。









わっちの背後に立っていたのは、まぎれもなく
遊女を汚いと貶めた、



鬼の副長その人だった。

雷鳴→←くもりぞら。

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