rd× 大好きやから続14 ページ29
「ちゃんと?」
「…まだ俺、好きなままなんです。情けないですよね
だから振ってください。」
弁当の蓋を閉めて袋に戻した。
いつでも立ち上がれるように整えて、
あとは大毅さんの言葉を待つ。
流星から貰ったお揃いは日の目を見ることなく終わってしまった。
行きたかった場所も、好きな店も、大毅さんとはもう行けない。
たまにしか触れられなかった温もりは今でも覚えてる。
好きが溢れてしまいそうで、苦しくなっても
我慢できてたはずやのに、どこか寂しいのはなんでなん?
「…大、重岡さん?」
「ん?」
「どうしましたか?」
俺の手を握ったまま、遠くを見つめて深呼吸をした。
すーっと吐かれる息が細く長くて、息ですら俺は羨ましい。
大毅さんのそばにいれたんやから。
「…俺、ほんまに誕生日過ごしたかった。
神山のこと祝いたかった。俺も祝って欲しかった。
小瀧に呼ばれたし、サプライズかと思って行ったら
神山おらんし、後から誕生日ももう過ぎたって聞いて
…神山の中で俺ってそんなもんやったんやって苛ついた。」
「俺なんかと居なくても」
「…俺は神山にとってそんな程度ってこと。」
「…」
「照史や淳太とは弁当食べて、羨ましかった。
嫉妬とかダサいやろ。
流星や小瀧とは楽しそうに喋って、ひっついてさ、
仕事以外での関わり方がわからんくなった。
…上司と部下の関係が1番ええんかもな、」
ハハっと乾いた笑いが聞こえてすぐに俺の手を離した。
赤く充血した目にはキラキラと水分が溜まっている。
ニッと自慢の歯を見せて俺に笑いかけた。
「誕生日おめでとう。祝ってやらんくてごめん!!
幸せになれよ!」
両手を自分の顔の前で重ねてごめん!と謝った。
苦しそうに笑うの?
「やっぱ、俺お前が好きや。」
「やったら、もう悲しませんとってください」
「え?」
「…も、1人、嫌っ、」
「うん、神山。ごめんな。もう悲しませんからな。」
今は嬉し涙かな?どんどん溢れてきて胸が苦しくなっても
なんかあったかい気がするの。
ガサガサとポケットを漁って俺の指に冷たいものが当たる。
ハッとして指を見れば銀色に光る輪が俺の指にはまっている。
「なに、これっ…」
「指輪。誕生日の日に渡したかったん。」
「ええのっ…?アクセ嫌いやん…っ、」
「…お前のためやったらなんでもしたいやん」
恥ずかしそうに笑う重岡さんを見て思わず笑ってしまう
会社やのに、誰に見られるかわからんのに
今、キスして欲しい
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作者名:suta. | 作成日時:2022年9月18日 10時