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赤
素直に呼べば来る。
俺の言うことに抵抗なんてない。
やれって言うたことはやるし、
やめろ言うたら辞めるし。
文句も辞めての一言もない。
気になることも、言いたいことも全部飲み込む。
だから俺もだんだん嫌気がさしてきた。
安「す ばるくん。」
行為が終われば一言も交えんのに珍しい。
いや初めてちゃうか?
す「…なんや。」
安「あのっ、…あのね、」
す「仕事の話ならLINEしてくれ。」
安「…す ばるくんにとったらただの仕事かも。」
す「…は?」
安「俺、もう来ない。今日で終わる。」
なにそれ。初めて言うたと思えばそんなことか。
なんや、来たくなかったんか。
ほんなら来んかったらええやんけ。
す「ん。」
安「ありがと。」
す「は?」
安「俺なんか選んでくれてありがと。」
す「…」
安「シャワー、どうぞ。もう帰るでしょ?」
選んでくれてってなんやねん。
俺が誰でもええみたいやんけ。
今も下を見続けるのは見たくないからか?
す「…安、」
安「ちょっと、やめてや…。
今まで名前なんて呼ばんかったやん…。
なんっ、で、最後にっ…」
両手で顔を覆って泣き出した。
俺には抱きしめることもできんのか。
優しく触れてやることもできんのや。
…こんなにもお前が好きやのに。
安「俺、好きな人おんのー。」
ヘラヘラした顔で酔ったんか俺にもたれかかる。
グラス両手で持って俺の顔を覗き込む。
こんなにも好きな奴が近くにおっても
そいつは他のやつ見てる。
安「でもその人、俺に興味なくてなあ、
きっと男が無理やと思うねん。」
す「そーか、」
じゃあ俺にしときや、なんて言葉
慌ててしまい込んでぐっと堪える。
安「す ばるくんはー?」
甘えた声で痛いこと聞きよんなあ。
す「…俺は、別に。」
やって、お前が好きやねんから。
安「…じゃあ俺のこと抱ける?」
グラス置いて、緊張してんのか目が濡れてる。
答え次第でそいつのとこに行くんか?
頷いた後は流れるまま。
チェックインしたあとにふと我に帰ったんか
安「…やめとく?」
ベッドの淵に二人で腰掛けて俺の方を見る。
こんなチャンス二度とないのに逃す訳ない。
代わりでもいい。そいつの名前を呼んでもいいから。
だから、今日だけは俺を見て。
安「ぁっ、あっ、/ すばっ、る、くん、/」
何度も何度も名前を呼ぶこいつに嫌気がさす。
引き寄せた体は俺に近くなる。
でも一番欲しい心なんて
俺が手に入れれるもんじゃない。
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作者名:suta. | 作成日時:2021年3月21日 2時