Oh My Honey【灰谷蘭】 (ページ8)

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早く帰った日は、とびきりAを甘やかすと決めている。

「A〜、今日の晩飯なに食いてぇ？」

いつも世界一美味しい料理を作ってくれているAへのほんの少しの奉公として、早く帰った日の晩飯は俺が作っている。

Aと出会う前はフライパンすら握ったことが無かったが、案外今ではちょっとした趣味の領域にきている。

「蘭ちゃんが作ったものならなんでも好きよ。でも、強いて言うならオムライスかしら。」

「Aはほんとにオムライス好きな〜。」

「オムライスは"まあまあ"好きよ。ただ、"蘭ちゃんの"オムライスは大好きよ。」

エプロンの紐をきゅっと結んで、「100点満点の答えだな」と頭を撫で回した。

冷蔵庫からニンジン、グリーンピース、肉を取り出して、ちょうど良い大きさに切る。Aは俺の様子が気になるようで、ちょこちょこと俺の周りを歩き回る。

「ほらA〜、包丁使ってっからあんま近寄んなー？」

絶対ないが、万が一。万が一俺がAを傷つけたら、きっと俺は泣き叫んでから喉を掻っ切ると思う。

「あら蘭ちゃん。私を子供扱いするのはやめてって言ったじゃない。」

ふんす、と鼻を少し鳴らした天使を「俺にとってはまだバブちゃんだけどな〜」と小突いてさりげなくリビングで待たせることに成功した。

＿＿

「A、飯できたぞ〜。」

俺の両手にのる2つの皿には、自分で言うのもなんだが美味そうなオムライス。今日は少しこってデミグラスソースを添えてみた。

「とっても美味しそうね！匂いだけで美味しいわ。」

Aの迎えの席について、両手を合わせる。たしか、こうやって「いただきます」するようになったのもAと出会ってからだなあ、

はふはふと口にほお張るAを、さて、今日は如何なものかと見つめる。

「ふふ、とっても美味しいわ。さすが蘭ちゃんね。」

「おー。そりゃよかったなあ。どんどん食えよ〜。」

心の中でほっと息をついた俺もオムライスを1口。……意外とうまくいったかも。

「ねぇ蘭ちゃん。蘭ちゃんの料理はどうしてこんなに美味しいの？」

Aは思いついたかのように疑問をぶつけた。上手い返答もなにも思いつかなかったので、唇に人差し指をおいて、こう一言。

「愛情っつー秘密の隠し味が入ってっからな。」