検索窓
今日:1 hit、昨日:8 hit、合計:7,998 hit

蛇になつかれる ページ3

彼のことは全く知らない。

そんな人を家にあげてるのも可笑しな話だけれども
悪い人ではないと思う。おそらく。

初対面から口が悪いのに、生意気なのに
それすらも強がりなのかなと考えてしまうくらい
彼の発した言葉も、その態度も怯えた子供のようだった。

「そんな!
迷惑なんて思わないです。いつまででも居てください。
ただ、困ってる人がいたら出来る限りのことをしたくて…」

「お人好し過ぎ。アンタそんなんで生きていけてんの?」

彼が少し馬鹿にして笑うから、つられてムッとしてみせる。

「悪かったよ。頭も冷えたし帰る。またな」

力になれた感じはしないけど解決したなら良かった。

あれ?

『またな』って…?
 

それからというもの、彼が定期的に家に訪れるようになった。

決まって朝方の時間。
お兄さんは仕事中の時間だと言う。

名前も知らない。年齢も知らない。
互いの過去なんて勿論、知らない。
ただ単に他愛もない話をするだけの時間。

私たちは、きっかけがあれば
いとも簡単に壊れてしまう関係で
繋がりなんて最初から無かったのかも。



このような生活が続いて約一年が経とうとして
とある日、珍しく夜中に彼が来た。

インターホンが鳴り誰だろうと不思議に思い出てみると
馴染みのな少年が立っていた。

「いらっしゃい。こんな時間に…珍しいね?」

招き入れても、玄関から動かない。

最近はあまり訪ねて来なくなっただけに余計思う。
やっぱり何かおかしい、様子が変だ、と。

「ここでいい。最期に会いたかっただけだし」

いつ終わりが来てもおかしくない関係だったとしても
こんな急に。受け止められないよ。

それに、最後って言葉に少し引っかかる。
別れの挨拶をするタイプだとは思ってなかったから。
会う頻度が減っていた事もあって
そのままフェードアウトする方が自然な気もした。

「待って!最後って何?
それに、この手。…どうしたの?」

普段通りの萌え袖から見えた手はメタル色に光っていた。

「アンタには、カンケーねぇよ」

初めて会った時とほぼ同じセリフ。
一年で近づいたと勘違いしてた距離が
いきなり突き放された。

「そうかも知れないけど!
 今、バイバイしたら君が消えちゃいそうで嫌」

泣きそうになりながら目の前の彼に訴えかける。
根拠は勘でしかないけど離したらダメだ。


ため息を一つ溢し

冷たい手を私の後頭部に添えて


彼はキスを落とした。


息ができないくらい長く、深く。

蛇に口づけを→←弱りきったネズミ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
75人がお気に入り
設定タグ:paradoxlive , パラライ , cozmez   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:わんしゃん | 作成日時:2022年12月29日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。