11．異質と特質 ページ11
あれから数日後、岬さんは復活した。
「久保さんから連絡あってレコーディングも順調に終わったって」
「ああ、間に合ってよかったです」
「ジェジュンさん、あの曲に6時間かけたらしいよ」
そこまでしてくれるなんて嬉しいよなー、なんて岬さんは呑気に言うけど1曲に6時間って。一応ジェジュンさんの音域に合わせてキーも設定したはずなんだけど、そんなに歌いにくかったかな。時間もあまりなかったし、練習するのも大変だっただろうな。
とはいえ、私たちの仕事はあくまで外注で。
完成した音源を渡してしまえばあとは無事にCDとして発売されるのをただ待つだけ。
その間にも他の仕事は日々入って来るし、ジェジュンさんのことはいい思い出というか、目の保養というか。生活時間帯が違うのか、マンションでもばったり会うなんてこともなく。たまに夜中に帰宅する音が聞こえてくるくらいで。
気がかりだったのはあの一万円のこと。
ポストに入れる？玄関に挟む？お菓子と一緒にドアノブにかけて置く？とか色々考えたんだけど、封筒に入れて見えないようにしたとしても一応お金だし、あと普通に「最悪」とか暴言吐いたことも謝りたい。
理由を話して岬さん、、はナイな。有栖さんに連絡先を聞く、というのも考えたんだけど彼はアジアを股にかけるトップアイドルらしいからあまり面倒くさいことをしたくないという気持ちの方が大きかった。
「ズルズル先延ばしにするの、悪い癖だよなあ」
「んーー？なんか言ったか？」
「別になんえでもな、、あ！岬さんそれ私がクライアントに個人的にもらったチョコレートなんですけど何食べてんですか！？」
と、そうこうしている間にアルバムなんてのはサラッと出来上がってしまってあっという間にうちの事務所にも郵送されてきた。
しかも発売前とは、ご丁寧に。
もちろん曲はどれも素敵。今までに出したシングル曲含めバラードと、ロックと丁度良く織り込まれていて、その中で私の書いた曲はどう考えたって、、
「異質。めっちゃ浮いてませんかこれーー」
「そうねえ。バランス考えたらまあどうしたのって感じよね」
「何でジェジュンさんこれでオッケーしたんですかね、、この曲出来たの最後だったはずなのに、うわーもっと爽やかな感じにすればよかった」
「でも、この曲凄い「ジェジュン」っぽいと私は思ったけどね。だからあの子もアルバムに入れたんじゃないかしら」
、、そういう物？
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作者名：藤村さき | 作成日時：2018年9月22日 3時
