�� ページ3
寝起きが良くない彼は、低血圧も手伝ってか、かなり朝は機嫌が悪い。
「…龍一郎さん？」
反応がないので近くまで行くと、やっと目が合って、腕を引っ張られる。
「きゃっ」
彼の身長は、178センチで、わたしは148センチしかないから、30センチも差があると、体はすっぽりと抱きしめられる。
「…うわ、夢かと思った。Aだ。そうだ、俺今日休みって電話したんだよな」
ぎゅう、と抱きしめられて、少し涙が出そうになる。
やはり、久しぶりに会うと、嬉しい。
胸の上の方が苦しくなって、ポロ、となみたがこぼれてしまった。
「…ごめんな、最近会えなくて。忙しい忙しいって言い訳しすぎだよな」
「わ、わたしもテストだったし…」
抱きしめてくれる力の強さに、先程疑ってしまったことを心の中で詫びる。
「それに、会えただけでチャラになった！」
ちょっと泣いちゃったけど、本当にそう思ってる。
「やっぱ寂しかったけど、龍一郎さんがお仕事頑張ってるから、わたしも頑張れたもん」
そういうと、彼は少し面食らったような顔をして、微笑んでキスをしてくる。
わたしもそれに合わせて、唇を重ねる。
少しずつ、少しずつ深くなっていき、彼の手がわたしの胸に優しく触れる。
わたしも彼の首に手を回しかけたその時、
『ぐうううううううううう』
彼のお腹が盛大に鳴った。
唇を離して、お互いに目を見つめて、同時に吹き出す。
「「ぷっ、あはははははは」」
彼は顔を真っ赤にして、頭をかく。
「ごめん、ムードがなくて」
「いえいえ、ご飯にしましょ、ってあ！！お汁！火、かけっぱなしだ！！」
慌てて火を止めに行く。
少し煮えてしまったが、大丈夫だろうか。
彼が、ひょっこりと台所に顔を出す。
「大丈夫だった？」
「うん…多分。ちょっと煮えちゃった」
「大丈夫。Aの料理はうまいから」
「そんなことないよ…失敗したし」
「いいからいいから。俺とりあえず机片付けてくるわ。Aも食うでしょ？」
「うん。じゃあ鮭焼いちゃうね」
「お！今日はシャケか！やったー」
鮭でこんなに喜んでくれる男の人なんて、他にいるのだろうか。
「そーゆうとこ、好きだなぁ」
って呟いたら、
「ん？なに？」
なんて上機嫌な顔で彼が振り向いたので、可愛くてわたしも笑みがこぼれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆめこ | 作成日時：2019年2月12日 21時
