5話 ページ6
?「怪我は、無いみたいだな」
怪我をしていないAを見て、安心したのかヒーローの表情が柔らかくなった。その瞬間、Aの心臓がｷﾞｭｩｩｩと誰かに掴まれるほどの衝撃を覚えた。
貴「!…汚れが」
さっきの怪人の返り血が左の袖口にベッタリとついてしまっていた。Aは、バックに入っているハンカチを取り出して、ポンポンっと汚れを取っている。
？「やめとけ、汚ぇぞ」
貴「助けて頂いた礼です」
Aは、照れくさそうに笑いながらポンポンと汚れを落としている。ヒーローは、何も言わずにジーッとその様子を見ていた。
貴「少しは、落ちました」
？「ありがとな…嬢ちゃんのハンカチ汚しちまったな」
白いマンボウのイラストがプリントされたハンカチは、怪人の返り血で青く染まってしまった。お気に入りのハンカチだったが、助けてくれたのだ、安い安い。
貴「いえ!使ってください!!」
?「そうか、ありがとな」
またしても、Aに笑いかけてくれたヒーロー。2度も心臓が握られるような感覚を覚えてしまった。すると、後ろからヒーローの名を呼ぶ声が聞こえた。
？「師匠ー!」
貴「あの、本当にありがとうございました!」
Aは、勢いよく頭を下げ失礼だと十分承知だったが、そのまま全速力で走って行ってしまった。
？「あ、おい!」
ヒーローの静止も虚しくAは、フルスロットルで駆け走りそのまま見えなくなってしまった。
？「ここにいたんですね…?師匠、そのハンカチは」
？「これか?…随分と、優しい嬢ちゃんから貸してもらったんだ」
ヒーローは、Aが走り去った道をただジッと見つめながら彼に伝えた。
？「師匠?」
？「あぁ、悪いな」
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作者名：唐墨 x他1人 | 作成日時：2022年2月5日 13時
