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番外編その2 ページ7

お化け屋敷であることなんてうわの空になりかけながらも数グループのお客さんを入れて作業をしていった。


何人目かのところで壊れかけた箇所を治すために、一度お客さんの出入りがストップする。


電気を付けての作業が終わり、電気を消して確認へと移った。

一緒に支えていた彼が修正作業のためにこの場を離れたため、再び私1人で段ボールを持っている状況に戻る。


電気が消え、1人になったことで私はすっかり気を抜いていた。


すると突然抑えていたはずの段ボールの扉の隙間から誰かが侵入してくる。

びっくりして慌てて確認すると、さっきまでこの場にいた彼だった。



「うわ、びっくりした。」

私はお客さんではなく彼だったことに安心し、そう零す。

私の様子を見て彼は笑いながら言った。


「びっくりした?驚かせようと思って来た。」


驚かせようと?私を?









…なんだよ、それ。





「うわぁ、さいてー。」


私は彼をからかうようにそう言う。

そんな風に軽口を叩き合えるくらい仲良くなれたのがなんだか嬉しくて。


「俺お化け役の色んな人を驚かせようかな」

「それタチ悪いな笑」




私が片想いしていた時期から比べて、大分関係値が変わったなぁなんて思いながら言い返す。




「例えば、あの子とか!
あの子ロッカーの中に隠れてるから出てきた瞬間に目の前に俺がいたら驚くよね。」





彼のその言葉で浮き足立っていた私の心が引き戻される。

彼が言う『あの子』とは私が彼を諦める1番の要因になった子だった。



「ターゲットはあの子だな。」

「あははっ、それは絶対驚くよ!」






幼い子供のような無邪気な笑顔を浮かべる彼に笑いながら賛同する。

けれど、私の心は一切笑ってなんかいなかった。



彼があの子を好きなんて知ってたけど、それでも本人の口から聞くと辛いなぁ…



絶対に縮めることのできない数センチを眺めながら、切なくなる。



今この瞬間は数センチなのに、なんでこんなに遠いんだろう。






もしあの時諦めないでいたら、君は私の気持ちに気付いてくれた?


今ここでこの数センチをゼロに出来たら、君は振り向いてくれる?






でももう遅いんだよ。全部、ぜんぶ。

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www - 続きって書けますか? (2019年11月3日 14時) (レス) id: c017dbb3ff (このIDを非表示/違反報告)
www - なるかさん» でしょでしょ?!(笑) (2019年10月5日 21時) (レス) id: bb2f701b11 (このIDを非表示/違反報告)
なるか(プロフ) - wwwさん» これは、続き気になりますねー (2019年10月4日 22時) (レス) id: cc5fc6c73c (このIDを非表示/違反報告)
カレン(プロフ) - できたらで良いのですが、番外編のような形で今日の深イイ書いて欲しいです。お願いします。 (2019年9月30日 22時) (レス) id: b3e45f8b93 (このIDを非表示/違反報告)
www - 更新よろしく☆ (2019年9月29日 16時) (レス) id: bb2f701b11 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:來(らい) | 作成日時:2019年9月5日 0時

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