▽難易度を選択してください【Fischer's】

8話 ページ10

《モトキside》



「幸福の形は人それぞれ」なんてさ もういいや、夜は訪れた それだけのことだろう




イヤホンから流れるのは先週出会ったばかりの彼女の声。


この歌ってみたも3日前に投稿されたばかり。

以前から彼女の歌は稀に聴いていたが、あの日の帰り道でAちゃんと話してから、なんとなく気になって過去の歌ってみたから最近のまで聴くようになった。




「あ！モトキ、それこの前投稿されたるりさんのでしょ？

やっぱりめちゃくちゃ上手だよね。単なる歌唱力だけじゃなくて人を惹き付ける力というか。」



音楽を聴く俺に近づいてきたのは、昔からの彼女のファンだというぺけたん。



そういえば、この前AちゃんとFischer'sのメンバーが天月さんを介して会うことになったのも、元はと言えばぺけの希望があったからだった。




「そーだねー。上手なんだけど、どこか不器用さが見え隠れする所に惹かれるかな。」



「おっ、なかなかわかってるじゃん。

てかモトキがそーゆー音楽聴くの珍しいね。
…ひょっとして、会った時に惚れちゃったとか？」


ニヤニヤしながらぺけが顔を覗き込んでくる。

なんでそうなるんだよ。
例えば自分の学校によく知らない有名人が来たら多少は気になって帰って調べるだろ？



「そーじゃないって。

どちらかと言えばぺけの方がそうなんじゃないの？
昔からのファンって言ってたじゃん、」


「いやいやいやっ！

俺のはそーゆーのじゃないの！所謂『推し』ってやつ！
俺のるりさんへの『好き』は『like』の最終進化形態みたいなものだから。」



そんな否定しなくても…

ぺけワールド全開すぎて全然わかんねぇし。
なんだよ、『like』の最終進化形態って…




「…わかんないけど熱量だけは伝わったよ。」




「ま、できることなら歌ってみたコラボとかしたいけどね。」




コラボなぁ…



ふと、彼女から来たLINEを思い出す。

「考えされてくれ」…か。






Aちゃん…否、『るりまっちゃ。』のことをしっかり調べてみてわかったのだが、彼女は活動を始めてから今まで、男性歌い手とのコラボ動画は疎か、生放送すらしていない。



天月さんとのあの仲のよさから、俺はてっきりコラボ数や生放送の数は少なくないと思っていた。





コラボの返事がもらえることになっているのは明日だが、正直な話、あまり期待はできないだろう



「…仕方ないか。」

9話→←作者より《※今後の展開の多少のネタバレ有》

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す