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「そらるさん、俺ね、結婚したんだ。」

優しげに笑う目を見て、何故かストンと受け入れられた。


「…そっ、か。」


「そらるさんに似た人でね、すごく美人。人の気持ちに寄り添ってあげられる人で、映画を観てよく泣くの。溜め込みすぎるところもあるから、救ってあげなきゃ一気に壊れちゃう。」


鼻先がツンとして、口元も震える。

やめてよ。


「俺ずっと、そんな素敵な人といるのに浮気してたんだ。
彼女を通して、貴女を見てた。」

耐えきれなくなって、スズムの胸に顔を押し付けた。

堪えきれない嗚咽が漏れる。


「…ほんとに、馬鹿…。」



情けなく鼻をすすってしがみつく俺に、構わずスズムは続ける。


「そらるさん、綺麗になったね。」

「…そりゃあね、昔よりカメラに映ること多くなったし、雑誌の撮影だってあるんだよ。」

スズムの親指が俺の目尻を撫でて、涙を拭う。

「そういうことじゃないんだけどなぁ…。」

「どういうことだよ。」

ムスッとして聞くと、スズムはけらけらと笑って両手で俺の頬を包む。

「なんか、丸くなったよね。」

確かに、あの時より美味しいものはたくさん食べてるけど。

「…ちゃんとダイエットしてるよ。」

「だから〜…なんか、昔よりツンツンしてないっていうか。」

自覚は無いけど、あの時より優しく見えるんだろうか。

「……。」

「愛されてるんだね。」



勝手に完結させんなよ。

過去の男になるなよ。

これだけ待たせておいて。

隠れておいて。


いろんな不満が浮かんでは消え、“綺麗”という言葉だけが頭の中をふわふわと浮かんだ。

ーー
続きます

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作品ジャンル:恋愛
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作者名:しろもも | 作成日時:2020年10月10日 0時

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