。 ページ11
.
「そらるさん、俺ね、結婚したんだ。」
優しげに笑う目を見て、何故かストンと受け入れられた。
「…そっ、か。」
「そらるさんに似た人でね、すごく美人。人の気持ちに寄り添ってあげられる人で、映画を観てよく泣くの。溜め込みすぎるところもあるから、救ってあげなきゃ一気に壊れちゃう。」
鼻先がツンとして、口元も震える。
やめてよ。
「俺ずっと、そんな素敵な人といるのに浮気してたんだ。
彼女を通して、貴女を見てた。」
耐えきれなくなって、スズムの胸に顔を押し付けた。
堪えきれない嗚咽が漏れる。
「…ほんとに、馬鹿…。」
情けなく鼻をすすってしがみつく俺に、構わずスズムは続ける。
「そらるさん、綺麗になったね。」
「…そりゃあね、昔よりカメラに映ること多くなったし、雑誌の撮影だってあるんだよ。」
スズムの親指が俺の目尻を撫でて、涙を拭う。
「そういうことじゃないんだけどなぁ…。」
「どういうことだよ。」
ムスッとして聞くと、スズムはけらけらと笑って両手で俺の頬を包む。
「なんか、丸くなったよね。」
確かに、あの時より美味しいものはたくさん食べてるけど。
「…ちゃんとダイエットしてるよ。」
「だから〜…なんか、昔よりツンツンしてないっていうか。」
自覚は無いけど、あの時より優しく見えるんだろうか。
「……。」
「愛されてるんだね。」
勝手に完結させんなよ。
過去の男になるなよ。
これだけ待たせておいて。
隠れておいて。
いろんな不満が浮かんでは消え、“綺麗”という言葉だけが頭の中をふわふわと浮かんだ。
ーー
続きます
終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←。
15人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しろもも | 作成日時:2020年10月10日 0時