【d!】85%の敬愛 (ページ8)

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軽快でレトロチックな音楽で私は目を覚ました。
まるでバーのような薄暗い空間。何処だ？ここ。
そうだ，私はさっき彼に…

｢あ，やっと目覚ましてくれましたね！｣

耳元で聞こえた明るい声に飛び起きる。目の前には瓶底メガネの可愛らしい男。にこにこ笑ってこちらを見ている。どこか安心感のある笑顔にほっとして冷静に状況を判断出来た。

私はソファに寝かされていたようだ。恐らく先程の階段の先だろうか，窓が1つもなくどこか冷たさを感じる部屋だ。だが，あのひっそりとした出入口であろう階段からは考えられないくらいに広い。

私の寝ていたソファに瓶底メガネ君も座っていた。すらりとした足を組み，頬杖をついてこちらを見ている。何となく目を合わせにくくて彼の方に顔を向けていないけれど，まぁこっち見てんだろうなーくらいには分かる。

｢今皆来ますからちょっと待っててくださいね｣

この人も関西弁だ。イントネーションが聞き慣れない。もしかしたらこの組織の人達は皆関西弁なのだろうか？
壁沿いに並んだショーケースに，ナイフや銃が並んでいる。そこには先程ゾムさんが持っていたナイフと似た形のものも並んでいた。
ショーケースをまじまじと見ていると，｢だーめ，アレは気にせんでいいんですよ｣と目を隠された。恐らく瓶底メガネ君の手なのだろう、片手でいとも容易く視界を奪われてしまう。私自身小柄な方では無いのだが，やはり男の人と比べられると劣る。

しばらくそのまま無言が続く。

中々誰も来ないので疑問に思っていると，瓶底メガネ君が私の目を覆っている手とは逆の手で私の手に触れた。そのまま指を絡めてくる。

｢ちょっと距離，近くないですか…？｣

上擦った声で彼に問いかけるも返事がない。節々がしっかりとした男の人の手が，ゆっくりと私の手をなぞる。彼が大きく息を吐く。どこか色気を感じる息に混ざる声に，私は困惑していた。

そもそも都会の人達は距離が近い。いや，地元の人達も近いには近いのだが，なんというか，接した時間と距離の近さが比例していない。そして物理的に近い。
これ以上命の危険にされされたくはないので，とりあえずは大人しくしていることにした。
本来ならば蹴飛ばしているところだが，平然と人を殺める武器を手にする彼らには手も足も出ない。

この部屋に出入口は1つしかない為，もし彼を蹴飛ばせたとしても逃げるのは困難だろう。

───本当に，なんでこんなことになってしまったんだろう。