【d!】85%の敬愛 (ページ7)

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混乱していた。
彼が見せたあの眼にも，彼が放った可愛いという言葉にも。
可愛い，ってなんだ，？
未だに言葉の意図が理解出来ず，足取りが覚束無い。彼はと言うと，何事も無かったかのようにまた私の前を歩いている。
まだ少し血が伝う首筋を気にしながら，私は混乱する脳を必死に整理しようと考えを巡らせていた。
ここら辺で沢山使われている言葉なのだろうか。“可愛い”は警戒するべき人に使う暗号のようなものだったりして。いやいや，実家で読んだヤクザものの漫画にそんなこと書かれていなかったぞ。

｢考え事か？着いたで｣

頭上から降ってきた彼の言葉にびっくりして辺りを見回すと，そこには地下に続くような階段とその壁に寄りかかるSPのような人1人が目に入った。

｢こっから先は一般人に見られてバラされたらあかんねん，すまんな｣

そう言うと彼は私の口を手で塞いできた。
彼が怖くて抵抗することが出来ずにいた私は，人工的な睡魔に襲われる。
睡眠薬。テレビか漫画でしか聞いたことがない。私は健康に育っているので眠れなくて飲むなんてことも無かったし，周りの人もそれらしきものを飲んでいる様子は無かったから初めての体験だ。
段々と何も考えられなくなり，視界も狭まってきた。口角をあげてこちらを見下ろす彼の顔を最後に，私は意識を容易く手放してしまった。