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昔、母親がとても丁寧に化粧をしていた日があった。






一つ一つ、鏡を見ながら丁寧に色をつけて綺麗になっていく中、時折悲しげに顔を顰める。



「どうして、お化粧しているの?」




そう問いかけた私に、母は優しく笑って答えた。


「今日はとっても大事な日だから。お化粧して、気合を入れてるのよ」





その日、母は父親と別れた。



夫婦仲が良い方ではないと幼いながらに理解していたが、突然の別れには流石に驚いた。





それを“大事な日”と称した母にも。









理解ができなかったあの日の事、今ならわかる。



母さんも、こんな気持ちだったんだろうか。





鏡の前で、いつもより気合を入れてメイクをしていく。





溢れそうになる涙を堪えて、あの日の母のように顔を顰めながら。







今日は、私の好きなものだけを使って。






今日は、誰よりも可愛くなって。



















「出来た」


鏡の中、幼い少女(わたし)が笑いかけた。















事務所のインターホンを押すと、すぐに扉が開いた。



そこには、気まずそうにこちらを見ている脇くんと銀太くんの姿。



後からやってきたまる君は、泣きそうな顔をしていた。



「どうしたん?」





「いや…その…」



言い淀む銀太くんに、何となく状況を理解した。





やっぱり、私の勘は間違ってなかったみたいだ。


「ふぉい君としゅんちゃんは?」






「向こうにいるっすけど、行かん方がいいですよ」


涙声になりながら、まる君が言った。





「大丈夫。ねぇ、3人とも。










ありがとう」

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なる - 久しぶりに泣きました!こんなに良い作品を作ってもらってほんとに感謝です、、!ありがとうございます! (2023年1月27日 21時) (レス) @page33 id: 0a17aac8c4 (このIDを非表示/違反報告)
コットン - 毎日更新してくださりありがとうございます!次のお話も待ってるよ(о´∀`о) (2022年11月13日 9時) (レス) @page33 id: cdf631467a (このIDを非表示/違反報告)
サママリネ - めちゃ良かったです! 次のお話も楽しみにしてます✨ 更新頑張ってください❤️‍🔥 (2022年11月13日 8時) (レス) @page33 id: accb57b751 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天ヶ崎音 | 作成日時:2022年10月30日 23時

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