拝啓、失恋者ども

１５ ページ19

ただぼーっと、撮影が終わるのを待つ。







「ねぇねぇ、社長とチカさん見た？」


「見たわ。やばかった。あの2人お似合いだよね」


「そうそう！チカさんの社長見る時の目とかさぁ、うちらでもドキッとするし」



「社長も絶対気ぃあるよ、あれは」






背後を通るキャストの声に耳を塞ぎたくなる衝動を抑える。





私だってわかってる。



美人なチカさんと、しゅんちゃんがお似合いだって。




私は2人の間には入れないんだって。





前まではそんな事なかった。


しゅんちゃんは女性に執着がないから、一度寝たら基本的に次はない。例えあったとしても、友達以上にはならないと側から見ていてわかる。





でも今回は違う。








撮影中もそうでない時も、2人は常に隣同士。時折耳元で何かを囁いて笑い合う。


まるで仲のいいカップルみたいだ。





幸せそうなチカさんを見るのが辛い。




楽しそうに笑うしゅんちゃんを見るのが辛い。




2人の間に流れる甘ったるい空気が、私の心臓を切り裂く。








あー…早く終わればいいのに…



















「PV撮影、全日程終了でーす！お疲れ様でしたー！」



しゅんちゃんの声でハッと意識が戻る。


よかった、何事もなく終わったんだ。



パッとしゅんちゃんの方を見ると、またチカさんが隣にいた。





しゅんちゃんの隣は、私のはずだったのに。幼い頃は、ずっと隣にいたのに。


どうして、今はあなたの隣で笑えないんだろう。




醜く歪んでいくのを感じながら、メイク道具をポーチに中に一つ一つしまっていった。

１６→←１４

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す