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背を、向けたけど。
その奥からどんどんと人の気配が迫ってくる。
「ありがとう！」
確証はないし彼女じゃない可能性もたくさんあったけど、でもその後に聞こえて来た声が、彼女のものだったから振り返ってしまう。
「……なんのこと」
「助けてくれたこと」
ロボが上から降って来たのよ、と空を指差して話す彼女に、返す言葉に迷って黙りこくる。
違うよって、言ったら会話が長引くかな。この女はバカなのかなんなのか試験中だというのに話しかけてくるし。
「うん、違ってても良いや。ごめんね、ありがとうかもしれない」
「そ、だね。残り時間少ないけど頑張って」
今度こそ、振り返らない。そう決めたかったのに、きょとんとした彼女の瞳に、動きを捕まえられた。
「えっと、」
「お互い
遮ってにっこりと言われた言葉に、彼女の疑問顔の正体がわかって、少し煩わしく感じた。
頑張って、じゃなくって頑張ろう、ね。
なに諦めてんの？っていうやつだろう。
君みたいなうってつけ個性じゃないもんで、と心の中で呟いた。
「ヒーロー科でまた会おう！」
一瞬、意味がわからなくなって硬直。
ひーろーか、で、あう。
それってヒーロー科になる前提じゃ……なる前提にされてんのか。えっ。
いや、うん。
もうこちらを向くことなく、駆けて行ってしまった背中を見て、ぐわりと心に太い管みたいなものが通って、中に何か流れた。
"私のヒーローだったよ"
やっぱり、憧れたものの、小さな実現を出来たみたいで、すっごく嬉しかった。
卑屈になってたけど、でもなんだかんだ言って培って来た夢は崩れることなどなかったんだ。嬉しいもんは嬉しい。
「ヒーロー科、」
でも夢っつーのは実現する力と意思がないと、夢で止まってしまうってよく言う。じゃあ、止めなきゃ良い。
今回、無理かも知れない。不利だ、不利。でも、あるのは知ってる。
でもな、やっぱり諦めてなくって良かったよ。おれ、ヒーローなれるかも知れない。なろう。
「ぜってぇ入る」
ぐ、と拳を握った。
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作者名：泡沫 | 作成日時：2018年7月21日 21時
