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十字路を隔てた後ろの道で怒った爆音に、男──心操人使は眉をひそめた。
(この試験、分かっちゃいたけど個性の向き不向きデカすぎない？ )
派手で戦闘向きな個性が圧倒的有利すぎるだろ、と毒付いたが、悪態をついても何も変わらないのは分かっているので、それがまた自身の心を追い詰めた。
爆音の主は、おそらく今までの人生でも勝ち組と言われていたような個性なのだろう。個性が華やかだと、どこに行っても得できる。
それは心操が十五年余り生きていた中でひしひしと実感させられた、この超人社会での常識だった。
しかし、天下の雄英でも、ここまで徹底的にその常識に従うものだとは思っていなかった。自分が柄にもなく期待を寄せてしまったことがそもそもの間違いだろうかと、気力が抜けていく頭で疑念が渦巻く。
「ックソ……」
なんでよりにもよってロボなんだよとキレたかった。
ロボ、つまり人ではない、喋らないものとの戦闘。そんなの、心操の個性が意味を成さないことは明白だった。
どんどんポイントが掬い上げられていくのを、横で見るしか出来なくって、恐怖と、恨みに近いものが頭の中に反響した。
せめて、何か。何か。
きょろきょろと見渡すと、先程、爆音を響かせていた道から黒髪の女の子が飛び出してきた。
うっわまじか、分かっちゃいたけど雄英えげつないなぁ。
飛びしだしてきた華奢な黒髪女子の後ろに山のようにギミックが重なっていて一周回って笑った。しかしそれはから笑い、心操は更に心が挫けそうになる。
しかし、本当にその一瞬後。
どこのどいつの個性か知らないけど、ロボがすごい速度で、飛んできていた。
それが、彼女の歩く、真上のビルに当たりかけそうになる。
「ッなぁ！！ そこの！！」
力一杯叫べば、彼女がこちらを向いた。
「ぇ──」
「右に避けろ！」
普段から瞬発力がある子なのか、俺の個性で命令すれば、素早く右にずれてくれた。
ドォン、とロボが大きな音を立てて落ちる。
それが落ちた衝撃で、彼女は俺の個性──洗脳が解けたみたいだった。
「へ、ってうぉおお！！！？」
彼女の目が焦点を合わせて、今度は自身の意思で反射のように右に飛びのいていた。当然だろう、急に頭がぼやけて、晴れて、そして横にロボの残骸が落ちてるって、驚き以外の何物でもない。
「……」
ぱちくり、と目を丸くさせて、こちらを見てくる。
その視線がとても痒くて、彼女に背を向けた。
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作者名：泡沫 | 作成日時：2018年7月21日 21時
