最難関登竜門は全力疾走が吉(５) ページ17
「よっ、」
手首をひねって、同時に糸をくるりと巻きつける。そしてそのまま重力に逆らい、グンっと大きく力いっぱい引っ張ると、次の瞬間にはもうロボヴィランの頭上に舞っていた。
「ほりゃっと」
ペタリと指を触れさせ、手を離せば次の瞬間には指と、ロボが糸で繋がっていた。それを確認してから少し遠くのビルの高いところに繋げた糸をグンっと引っ張る。一応専用の機械も使っているから、容易く私とロボは持ち上がる。
「どっ、」
そうなるともう、私は振り子のように、自分と繋げたロボと同じような型のロボの群れへと突っ込んでいっていた。私の足一つでは一体壊すごとに骨折は免れないが、同じ硬さのロボ同士なので、相殺し、互いに壊れる。
その壊れた物も咄嗟に触って、を繰り返し、そして振り子の私が最も高くに振り上がった時、
「せぇぇぇえええい！！！！」
繋いでいた糸を全て切る！
すると、恐竜の足音のような轟音が響き渡り、土埃が晴れた時、私が通った道の後ろは緑色の瓦礫でいっぱいになっていた。
私がつないで壊した分。私が壊した分を落としたときに壊れた分。それが合わされば相当な数に上る。
頭の中で浮かべるだけだった自分の戦闘スタイルが、そのまま今実現できている。ものすごくそれが嬉しくって、思わず両手を合わせて指を組み、きゅううっと力を込めた。巻きつける時に痛くならないように、とお父さんがくれた革の袖がギュシリと音をひねり出す。
でも、轟音は常に鳴り響く。私だけじゃないんだ、こんな気持ちになってるの。
私だけじゃないんだ、上手くいってるのは！！
緩んだ顔を引き締めて、また私は駆け出す。油断してちゃならないよとあちこちで叫ばれている気がした。
唸れ！！ 拙僧の筋肉！！
友達の好きなアニメだかゲームだかのキャラクターのセリフをお借りして、またもや私は宙を舞い、振り子のように一定のスピードでロボを倒し続けた。
止まってはいけない。負けてはいけない。叫び続けろ。何を。私の正義を。私の存在意義を。
試験前に見た緑谷くんの背中に手を引かれるように、ただ前へ前へと飛んだ。
お父さんは、プロのヒーローは、正義の道を歩いているのではないと言う。
悪の道を歩いているのだと言う。そうでなければ敵を救うことは出来ないと。道を振り返れば敵がいるから、その手をガッと引き寄せるものだろうと。
ヒーローに救って欲しいのは、市民ではなく、市民を傷つける敵だと、お父さんは笑っていた。
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作者名：泡沫 | 作成日時：2018年7月21日 21時
