私が主人公だからね！！【MHA】 (ページ12)

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三百人に一人は文殊の知恵(４) ページ12

『今日は！俺のライブに！ようこそーー！！！』

だだっ広く、殺風景で冷たい雰囲気。しかし現代の空調設備の賜物でむしろ眠気すら感じさせる、講堂。
その講堂に存在する、全ての注目を集めるであろう場所で、スクリーンを背に、声高らかに叫ぶプロヒーロー、プレゼント・マイク。

この季節、この会場、集められた人たちの年代、そしてその人数、プレゼントマイク、そして彼が手を置く教卓に嵌め込まれたシンボル。

それらが指し示すは言わずもがな、誰もが一度は視野に入れて、すぐさま追いやる可能性。

雄英高校ヒーロー科の、入試試験会場だ。

ここにいる人間は皆、その誰もが追いやる可能性を、視野に入れて、そしてそのまま己の手にしっかり掴み込んだ人間たちと言える。
雄英を受ける、それだけで度胸も座っていれば実力も粒揃いということが、社会的に大前提。

しかしその粒がひたすらに多い。マイクが個性を使っているから難なく聞こえるものの、彼の個性なしに普通の機械のマイクなら、幾つのスピーカーが必要なのか。

そのマイクが、受験者諸君に『エヴィバディセイ、ヘイッッ！！！』と、アメリカンに先ほどの自分の言葉の復唱を促す。

『………………』

しかし誰も口を開かない。

サングラスの奥で少し視界が滲むプロヒーロー。
空気に耐えきれなくなって涙目なプロヒーロー。
それでいいのかプロヒーロー。いいらしい。

「よ、ぉ、」

一人復唱しようとして、周りの雰囲気に次の言葉を奪われた人間も、羞恥心から、そして周りのノリ悪さに肩をすぼめた。

(言わなきゃ良かった、てかみんな言えよ……！んでもってちょっと振り返ってくすくす笑ってたやつら入学したらしばく！！鼻で笑った爆豪は殴る！！)

そのくすくす笑ってたやつらが同時に「かわいー」という言葉を混ぜていたのも腹立たしい。
ちくしょう人が童顔清楚系美少女だからって馬鹿にしやがって、と要編糸は内心で毒付く。

しかしそれらが聞こえていないマイク。あまりのショックに身体を震わせながら、しかしプロらしくテンションは落とさず、先ほど同様アメリカンに言葉を続けた。

『こいつあシヴィーーーー！！！！受験者のリスナー！実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ！！』

『アーユーレディ！？』

その受験者リスナーたちに視線を配る司会者だが。

『YEAHH!!!!』
「いっ、えぇ……」

(二度目の正直もないのかよ！！)

また、奥歯を噛みしめる要編糸の姿しか見られない。