世界に二人 ページ3
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すっかり暗くなった頃、空き家には小さな物陰が動く
「今日の奴らはしつこかったな…」
子供、もといAは月明かりを頼りに、奪った鞄の中から財布や金になりそうなものを取り出し、見繕う
「うん、これだけあれば1…2週間はなんとか生きれるな」
そう言うとAは取り出したものを無造作にポケットに突っ込む
「自由…まぁ昔思ってたような自由ではないけど、昔よりずっとマシだな」
Aは部屋の隅で小さくなるとウツラウツラとし始める、足を丸め背を壁につけて眠り始める
「大丈夫、明日はきっと…きっともっといいひになるからよ」
Aは目を瞑りながら自分に言い聞かせるように呟く
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そして日が登り辺りが明るくなり始めた頃Aは目覚める
温かい布団、枕のそばにはぬいぐるみがあり子供机の上には太陽の光を反射し、眩しいくらいに輝くピカピカの青いランドセル
小鳥がさえずり朝を知らせ、部屋の外からは何か炒めているような音がする、きっとお母さんが朝ごはんを作っているんだ
起きなきゃ、起きて、顔を洗って、着替えて…それから「おはよう」っていわなきゃ…
「……それが前の日常だったのに」
目が覚めれば、無くても変わらないくらい硬く、シミや土で汚れたマット、雨が降れば雨漏りしまくる屋根、踏む場所を間違えたら穴があく床に昨日買って食べた半分のおにぎりと水が入ったペットボトル これが今のAにとって当たり前の生活だ。
Aにも昔はちゃんとお父さんもお母さんもいて、愛情をたっぷり注がれすくすく育っていたのに
今思えば、あの時はまだ幸せだったと思う、まだ自分は守られていたんだと、でもそれは長く続かなかった
「…」
寝起きで腹が減っていたAは昨日残していた半分のおにぎりを食べる
冷たい、それに米がパサパサして決して美味いものじゃないけど腐ってはいない、それで十分だ。
そう言えば今日は何曜日だろうか、ここは空き家、もちろんテレビも無ければ新聞だって来ない
情報を入手するには外にある大型のモニターを見るしかないため、Aは外に出ることにした。
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「きょうはいつもより人が多い気がする…」
それもそのはず、モニターの【今日の天気】には日曜日ということと、遊ぶにはピッタリの快晴!なんてことを言いふらしているため遊びに行くやつが多いようだった
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作者名:なんかそんな感じの何かさん | 作成日時:2022年9月17日 13時