世界に十四人 ページ16
Aはそのケースをまじまじと見つめる
「……しばらくしてやっぱり返せって言われても返さねぇかんな」
「あぁ、勿論だ」
理鶯はAの手の中にあるマイクを見て微笑む
「これでAも立派なラッパーだな」
「……そうかもね」
Aは曖昧に答えながらマイクを撫でる
「…ぉ」
マイクを起動すると持ち手がグンと長くなり、背後には空間を引き裂いたような指と、その中から覗く目のようなマイクを見つめる
「しかし、やはり驚いたな」
静かだった理鶯が口を開く
「まだ中学生にも上がっていないAがこれだけの力を持つとは」
「どういうこと？」
「マイクは本来もっと精神力を消耗する物だ、それをまるで自分の手足の様に操っている、凄いことだ」
「へぇ……俺にとってはただの棒だけどな」
Aはマイクのスイッチを切り、もとに戻す
「……なんか疲れたから寝る」
「あぁ、ゆっくり休め」
理鶯は立ち上がり、テントに入ろうとするAに声をかける
「誕生日、おめでとう」
「……どーも」
理鶯がテントに入ると、Aはテントの隅で体育座りになり瞳を閉じていた
「横にはならないのか？」
「だって寝たら、何かあったときすぐに逃げられない、誰かが来てもすぐ起きれるようにしておきたい」
「なるほどな」
理鶯は毛布を取り出して、Aの体に掛けるとAの隣に腰をおろした
「わざわざ俺に気を使う必要無いんだぞ」
「気にするな、小官が好きでやっていることだ」
Aはふと顔を上げ隣に座る軍人を見てみる
「……」
Aはまた下を向いて膝を抱える手に力を込めた
「……」
Aはゆっくりと口を開く
「……毒島」
「なんだ」
「……ありがと」
「気にするな」
理鶯は再び前を向き遠くを見る
Aは少し頬を緩ませると再び目を閉じた
あれからそれなりの時間が経った、わかりやすく数字にするなら2週間ほどだろう
たまにドリルを開いて進めたり虫を捕まえたり捕まえたり虫を食べたりと自由に生活していたが、特に変わったことは無かった
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作者名：なんかそんな感じの何かさん | 作成日時：2022年9月17日 13時
