世界に十人 ページ12
「あと……」
「?」
「飯……作ってくれたら……いいよ」
「了解した」
そう言うと理鶯は微笑み、二人並んで野営地へと戻り、また二人は眠りについたのだった
〜とりあえず他人〜
小鳥の声でAは目を覚ます、そこはぬいぐるみもランドセルも無ければシミだらけの壁や穴だらけの床も無かった
ただ、外から何かを炒めるような音がしていたテントを開け、外に出ると理鶯が料理をしていた
「……昨日と比べると意外とちゃんとした朝食だな」
Aの目の前には目玉焼きとソーセージが添えられたトーストと、野菜サラダが置かれていた
「おはよう、ちょうど朝ごはんができたところだ」
「んー……」
Aは目を擦りながら大きく伸びをして辺りを見渡す
「夢じゃないんだな、ここにいんの」
「まだ疑っていたのか」
「そりゃそうでしょ、普通に考えて昨日の今日でここまで環境が変わるとか信じられないだろ」
「ふむ……ではこうすれば信じるか」
理鶯は皿を持ち、テーブルに置くと座るように促す
「ほら、食べよう」
「……」
「いただきます」
「…………いただきます」
「うむ、美味いか?」
「…うまい」
Aはトーストを口に運び、咀噛しながら答える
「それは良かった」
「…ごちそうさま」
「早いな、よく噛んだか」
Aにとってまともな朝食は久々だった、綺麗に食べ終え皿を重ね、コップに入った水を飲み干す
「なぁ」
「なんだ?」
「俺、あんたが思ってるほど子供じゃないからな」
「そうなのか?小官から見たらまだまだ子供のようだぞ」
「俺は子供扱いは嫌いだ」
「すまない、以後気をつけよう」
「ふんっ……」
ぶっきらぼうに答えながらAはテントの中に戻り体育座りをした
「A」
「…何」
「小官はこれから出かけるが、どうする」
「別に…どうもしねぇよ」
「そうか、ならばここで待っていてくれ、すぐに帰る」
「わかった」
理鶯は食器と調理器具を片付けると必要な荷物をまとめ、誰かと連絡をとる
話し声は聞こえないが、自分には関係ないだろうと思い隅を眺めていた
「では行ってくる」
「ん」
短く返ししばらくすると、鳥や木々の揺れる音しか響かない静かな時間が訪れた
「暇だな…」
Aはポケットに手を入れるが、昨日没収されヒプノシスマイクは無い、携帯なんてものも持ちってないため一人の時間はひたすら退屈だった
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作者名:なんかそんな感じの何かさん | 作成日時:2022年9月17日 13時