その16 ページ16
＿＿相変わらず表情が全く読めん。
手首で輝く飾りを顔の前に掲げる彼女の表情から読み取れる感情は一切無い。
だからと言って冷酷とか感情を無くした人間とかそういう訳でもなく、ただただ何を考えているのか全く分からないだけなのだ。
「五虎退を助けてやってくれてありがとな。感謝するぜ」
「五虎退さんには親切にしていただきましたから」
「君のその言葉はどうも薄っぺらく思えて仕方ない」
「......そう思ってもらって結構です」
まずいな、今の俺の発言は良くないな
忍びは感情なんて無いものだと自分の中で勝手に決めつけてしまっていた所があったためか、無意識に彼女の人格を否定するような事を言ってしまった。
心なしか、彼女は少し間を置いて口を開いていた。
「すまない、酷いことを言ってしまったな。」
「本当の事ですから」
どこか寂しげにそう言う彼女の表情は、なんとなく先程よりは人間味が増していたような気がした。
.
.
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「薬研、忍びの娘が自分の足で帰ってきたぜ」
既に五虎退を忍びが助けたという情報が伝わっていたのか、薬研は忍びの娘に礼をした。
「弟を助けてやってくれてありがとな。」
「弟さんだったんですね。良かったです。」
「今その手首のやつを外すから、ちと待っててくれ」
そう言って薬研はゴソゴソと道具を取り出す。
「...所で忍びのお嬢さん、それを外した後はどうすんだ」
どうせまたさっさと帰ってしまうんだろ、と思っていると
「.......そうですね、特に決めていません」
予想外の返しに、どこか心が躍った。
もしかしたら、この本丸で少しの間一緒に過ごせるのではないかと。
「ほ、ほんとか？！ならここで少しの間居候でもしてみないか？？
な？少し...」
「旦那、一気に喋りすぎだ。
で、どうだ？もし仕事が休みにでもなったんなら、弟達と一緒に遊んだりでもしてもらいたいんだが」
少しの沈黙が置かれた後、彼女は答える
「....では、少しの間だけお世話になります。」
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作者名：にわ | 作成日時：2020年2月7日 19時
