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二度と戻れないあの時 ページ43

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『おじさん注文!カレーライスひとつ!
それとあっちのテーブルの人はセットメニュー!』


「はいよ!」




今から4年前の話だ。
私がアルバイトをしているこの洋食店は
繁盛している、とは言い難いが
固定客はいつも居り、閑古鳥が鳴くことはない。


このお店が、居心地が良くて大好きだった。




___チリン、とベルが鳴るとともに
1人のお客が入ってくる。




『いらっしゃ…あ、織田さん!今日もきたんだね。』


「まぁな。いつもの。」




彼は常連客の1人。織田作之助さん。


決まって昼に、男性が毎日1人でくるので、
気になって話しかけたことがきっかけとなり
今では仕事の合間に話す様になっていた。


ポートマフィアで働いてる、なんていうのを
聞いたことがあるけれど
この人が?と拍子抜けしてしまう。


それくらい、心優しくて、落ち着いていて。

いつも言っていた「小説家なりたい」という
夢の方が似合っていた。




「ごちそうさま」




早々に食べ終えた後、「上にいるか?」と一言。




『うん、いるよ。多分この前もらったやつで
みんな遊んでるんじゃないかな』


「良かった」と心なしか微笑み、
階段を使って二階へと上がっていく。




『…めちゃくちゃ大きな袋、持ってったよね?』


「また買ってきたんじゃないのか?
織田くんのことだから。」


『あの子達が欲しいって言ったもの
すぐ買ってきちゃうんだよ、もう…』




二階にいるのは、5人の子供たち。
元々は孤児だった子達である。
そしてここで引き取って育てている。


私も一緒に遊んだりはするけれど
織田さんには敵わない。
みんな、それ程大好きなのだ。




ひとしきり上の騒ぎが静まったところで
織田さんが下に降りてくる。




「また来る。」




そう立ち去るいつもの背中を、私は見送った。








…人はいつもそうだ。
二度目があることを信じて疑わない。
それが当たり前だと思い込んでいる。








「Aちゃんも、もう上がっていいよ。
いつも残業してもらってるし…」


『いや、そんな気にしないでよ、
残業って言っても、あの子達と遊んでるだけだし!
…あ。でも今日はお言葉に甘えて早く帰ろうかな。』


快諾してくれた店主にお礼を言い、
私は店を後にした。

今日の織田さんを見てあることを思いついたのだ。






『次のバイトまでに新しいおもちゃ買ってあげよう!
…喜ぶかなあ』








____けれど。
買ったおもちゃを渡す日は永遠に来なかった。

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作品ジャンル:アニメ
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mikky - ギャグ線高くて面白かったです!!ニヤニヤ止まりませんでした! (2021年6月25日 16時) (レス) id: 0c37dc8e40 (このIDを非表示/違反報告)
アヤカ★(プロフ) - ましろさん» 更新頑張ってください。楽しみにしてます。 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 65fd904e63 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - アヤカ★さん» コメントありがとうございます!ずーーーっと2人に幸せになって欲しかったのでようやくかけて安心しました(T_T)コメントたくさんいただけて嬉しかったです!残り1話ですが最後まで宜しくお願い致します♪♪ (2020年5月9日 20時) (レス) id: f8809b1e73 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - 嘘吐き姫さん» コメントありがとうございます!バラの本数まで本当は描きたかったですね笑最後までお付き合い頂きましてありがとうございました(T_T)!! (2020年5月9日 20時) (レス) id: f8809b1e73 (このIDを非表示/違反報告)
アヤカ★(プロフ) - 完結おめでとうございます。ハッピーエンド感動しました。 (2020年5月8日 18時) (レス) id: 65fd904e63 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2017年8月20日 11時

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