まずいトマトリゾット ページ30
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いつもなら取り留めもない話をして
夕食の時間を過ごしていたのだが、
____今日は違った。
つけっぱなしにしていたテレビの音が
うるさいほど部屋に響く。
料理を幸せそうに頬張ってくれる中原さんが、
作業のように口に食べ物を入れるだけだ。
私はいてもたっても居られなくなって静寂を破った。
『あの、今日は、トマトソースこだわって
作ってみたんですが…いかがでしょう?』
「……そうなのか。」
『お口に合わなかったなら今すぐ作り直すので
お皿を頂けると、』
「いや、いいよ。旨いから。大丈夫。」
『………そう、です、か…』
…そしてまた会話がなくなった。
私は、自分のリゾットを一口食べてみる。
____初めて中原さんからリクエストを貰い、
張り切ってお昼から作り始め
これも違う、あれも違う、
と試行錯誤を繰り返してできたこの味。
我ながら上手くいったと思ったのだが…
今は、全く、美味いと感じない。味がしない。
________胸が、苦しい。
中原さんが「美味しい」と笑って食べてくれないと
意味が無い、のに……。
一体、何が、あったんだろう。
____それが気になって仕方がない。
だが、そんなことを聞けるはずもなく、
しばらく無言が続いたが…
ふと、中原さんが口を開く。
「なァ。
手前、会いたい奴とか、いねェのか?」
『会いたい、人…』
探偵社の皆が頭に浮かんだ。無意識に。
私は直ぐに頭の中から皆の顔を消す。
『急に……どうしたんですか?』
「居るンだな、矢っ張り。」
どうして、そんな顔をするんですか____?
「其奴に会いに行っても…いいンだぜ。
いくら契約ッたって、
別に俺一人でも飯は…作れなくても、
コンビニもあるし、手伝いだって、呼べるし。
俺一人で、出来るから。」
" 手前なんか必要ない "
そう、言われたような気がして。
突き放した様なその言葉。
自嘲気味に笑う中原さん。
その顔は、今にも泣いてしまいそうで。
「……ごちそーさん。風呂、入ッてくる。」
そう言って立ち上がり、
部屋を出ていってしまった。
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ここからシリアス回続きますご了承ください…
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mikky - ギャグ線高くて面白かったです!!ニヤニヤ止まりませんでした! (2021年6月25日 16時) (レス) id: 0c37dc8e40 (このIDを非表示/違反報告)
アヤカ★(プロフ) - ましろさん» 更新頑張ってください。楽しみにしてます。 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 65fd904e63 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - アヤカ★さん» コメントありがとうございます!ずーーーっと2人に幸せになって欲しかったのでようやくかけて安心しました(T_T)コメントたくさんいただけて嬉しかったです!残り1話ですが最後まで宜しくお願い致します♪♪ (2020年5月9日 20時) (レス) id: f8809b1e73 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - 嘘吐き姫さん» コメントありがとうございます!バラの本数まで本当は描きたかったですね笑最後までお付き合い頂きましてありがとうございました(T_T)!! (2020年5月9日 20時) (レス) id: f8809b1e73 (このIDを非表示/違反報告)
アヤカ★(プロフ) - 完結おめでとうございます。ハッピーエンド感動しました。 (2020年5月8日 18時) (レス) id: 65fd904e63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2017年8月20日 11時