転生した先は孤児で神主に拾われた (ページ39)

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三十八話目『繰り返すには』ページ39

その後の記憶は綺麗さっぱり私には残っていなかった。
聞けば白狼がギリギリまで、私の余力を使い食い止めていた。
そこへ捜索に来ていた玄朱さんが知り合いのヒーローを引き連れて乗り込んだらしい。
最初に目覚めたのは、病室の中、白い壁が目に飛び込んできた。

「真白！」

「……」

焦凍は目覚めた真白を視界に入れた瞬間、離さないとばかりに、幼少の頃のように抱きつく。
真白は何も言わずにいる、あの時の情景が声が音が目や耳に張り付いて離れない。
夥しい血の量、が頬に手にべっとり付いているように見えた。

「……はッ…ハァ……ハァ」

「真白？」

得体の知れない嫌悪感が胸を喉を頭を歪ませる、気持ち悪い。
今すぐに拭いたくて洗いたくて仕方がない。
次に叫び声が頭の中で響き、割れるように痛い。
次から次へと降りかかる幻影、嫌悪感、吐き気、痛みのいずれかが自分自身を蝕んでいく感覚がする。
その時の目は、焦凍が見たおかしくなった母と真白が見たおかしくなってしまった両親と似ていた。

「これは…精神科だね、ヴィランと遭ってこうなってしまう人も少なからずいるんだよ、まあ外傷がないだけマシだよ」

「そう、ですか…保護者に伝えておきます」

医者からの話を聞き冷や汗を流しながら答える、聞けば目の前で自分と同じくらいの少女を残虐な方法で殺されたとか。
母が死ぬ間際を見た、眼前で助けられなかった少女、何方も状況は同じだった。
真白は二度、同じことを繰り返した、その事実が彼女にどれほどの苦しみを与えるか想像もつかない。
分からない、分かってやれないことを悔しく思った。