第36話 ページ36
わかりやすく口を開けて驚く様子に目を少し丸くすると肩を小刻みに震わせて笑い、武道の肩を軽く2回叩いた。
「ははっ、大丈夫だよ。だって私に手出すの?」
「へっ!?そんなのする訳ないだろ・・・!てかホントにする奴がいんのか!?」
迷いなく、力強く答える姿にドラケン君を思い出した。そういや、ここの副総長はマトモそうだったもんな。
普通にいい子じゃん。不良やってんのが不思議なほど。それとも私の方がガラの悪い連中を見慣れすぎてるのかも。
「まさか・・・その怪我も、そういう奴が関係してるんすか?」
「あー、見えちゃった?」
上着でパッと見はわからないが、角度的に見えたようで視線は折れた腕。竜くんが私の怪我を見られたくなさそうにしていたのを思い出した。
実際、このスキをついて蘭ちゃん達と敵対する連中に狙われても困る。秘密にしてもらった方が有難い。あの2人を止めるのは''私が''大変だから。
「どんな手でも使おうとする奴って・・・一定数いるんだよね。あんま知られたくないから秘密ね」
どこにでもイカれた奴はいる。そういう奴は相手が女だろうと容赦なく手を上げる。灰谷兄弟の妹という立場の私はそういった奴を多く見てきた。
「マジか・・・ソレ、どこのクソ野郎っすか!」
「そんな酷ェことする奴がいんのかよ。許せねェ・・・」
「ハハっ。武道と千冬って、不良っぽくないね」
いい意味でね、と付け加えるように言葉に残すとフッと肩の力を僅かに抜きながら笑った。蘭ちゃん達と敵対してなければ、友達になれたのかな。
「久しぶりに楽しかった。でも、武道も千冬もトーマンか。私は灰谷兄弟側の人間、相容れないわね」
特服を見る眼を細め、そう呟くと千冬の顔は険しくなる。背を向けて顔だけを振り向かせると手を上げて軽く揺らした。
「仲良くなれそうだったのに、残念。バイバイ」
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