第33話 ページ33
現状話を聞くだけで明らかにヤバい。普通のケンカじゃないのはよくわかった。数秒考えると蘭ちゃんに手を差し出した。
「蘭ちゃん、警棒貸して。頑張って数人は潰すから」
「フハッ。なにヤル気じゃん」
蘭ちゃんは目を丸くして、次の瞬間には肩を揺らして笑ってる。ツボに入ったようだ。
目に溜まる涙を指で拭って満足したのか、蘭ちゃんは私の頭の上で手を弾ませた。
「ケンカって言っても、今回オレらは見物だぜ｣
「あ、そうなの？」
「ホントは連れて行きたくねぇけど、一人にできねぇしな｣
竜くんの言葉から葛藤が伝わってくる。だけど、勝ったのは一人にさせたくないという気持ちだ。
先日の事があるからだろう。留守番ぐらい一人でできるし、失礼なと言いたい所だが喉元まで出ている言葉を飲み込む。
できる、できないの問題ではなく''させない''つもりだ。
目の届く範囲に私を置きたいのだろう。おそらく、それは蘭ちゃんも。昔から過剰なとこはあったが、先日の一件で助長させたようだ。
私が学校を休んでいる間やたら機嫌がいいのも、それが理由だろう。このままだと、学校に行くのを許してもらえないかと思うほどだ。
「てか、私が行っていいの？それ。絶対場違いだよ」
「オレらに文句言う奴がいると思うか？」
妖艶に微笑む蘭ちゃん。灰谷兄弟に意見を言える奴がいるのなら、是非とも見てみたい。いたとしても、それは よっぽどケンカに自信のある人間か、ただのバカだ。
「あぁ、それともコワイか？｣
からかう様に笑う姿にムカッとくる。さすが蘭ちゃん、私の癇に障る言葉をよくわかっているよ。
「バカにしないで。蘭ちゃんよりコワイのないから｣
「あー･･･それはわかる」
まず第一に寝起きの怖さはピカイチ。しょっちゅう返り血まみれで帰ってくるし、機嫌が悪い時もヤバい。終いに灰狂戦争の時は人殺すし、ネンショー行くし。
これを長年 見ていたら大概のものは怖くないし、もう慣れてしまった。今は、そこらの不良も子犬のように見えてしまう。
「ン？あー･･･よく考えたら、竜くんも中々コワイか」
「はっ？兄ちゃんには負けるだろ」
私達の会話を聞いて、気に食わなかったのか竜くんは頭をはたかれ、私は額を指で弾かれた。
「バカなこと言ってねぇで行くぞ」
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