第27話 ページ27
「竜くん、言っとくけど身体みたら殴るからね」
服を着せてもらいながら思い出したように忠告し、首から顔を出すと目の前で竜くんが舌を出す。
「バーカ、ガキの身体なんか興味ねぇよ」
「なんか、それはそれで腹立つんだけどっ」
頬でも引っ張ってやろうかと動く方の腕を伸ばすが笑いながら手首を掴まれる。私が悔しそうな顔をすればするほど楽しそうだ。
「・・・なあA、それ誰の服だ」
「え?竜くん」
今更 隠す気もないし、何か?というスタンスで当然のように答える。むしろ、いつ気づくかなーなんてゲーム感覚だった。
「見覚えあるはずだわ。明らかにサイズ合ってねぇし」
「丁度いいとこにあったから。借りるね」
「普通、借りる時は先に言うんだよ」
ご最も。しかし、竜くんに正論で諭されると変な気分になる。
色々ヤバいことやってる竜くんには負けるよね。
ソファの背もたれに背だけでなく、頭も乗せると口を尖らせながら気だるく「だってさー」と言葉を続けた。
「腕、固定してるから私の服じゃ着にくんだよ。しばらく竜くんの服貸してよ。大きいから怪我してるのも隠せるし」
「いいけど、汚すなよ。あと、腕のホルダーはつけろ」
面倒くさがる私の事をわかっていたのだろう、服の上から腕を吊るすホルダーまでしっかりつけられる。
「えーっ、これあると動きにくいのに」
「動くな。3週間はこの生活だからな」
最悪。その言葉が小さく漏れると急にやる気がなくなる。学校も面倒なので一週間ぐらいは休んでやろう。優等生のAさんはしばらくお休みだ。
休むとなれば、腰を上げて冷蔵庫の隣にある棚の前に立つ。ズラリと並ぶ酒。どれにしようかなーと何個か酒瓶を手に取り、グラスと一緒にカウンターに置く。
「竜くん、運ぶの手伝って。そっちで飲みたい」
「オマエ、朝から飲む気?」
「朝も昼もあんま変わんないから」
顔を若干引きつらせながらも私が持てない分をリビングのテーブルに置いてくれる。そして何だかんだ酒瓶を開けて自分の分も注いでいる。
お酒を見せれば、竜くんも付き合ってくれると思った。一人で飲んでも面白くないしね。
「酒の匂いさせて学校行くわけにもいかないし、普段我慢してんだもん。朝から飲めるとか最高っ」
「オマエ、よく学校で優等生のフリができてんな」
ソファで膝を立ててグラスを揺らすと口の端を引き上げた。
「灰谷兄弟の妹だよ?この溢れ出すカリスマ性で、どうにでもなるから」
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