第26話 ページ26
起きて隣を見ると寝息が聞こえる。少し覗き込むが私にも気づかない。凶暴な狼も寝てる間はカワイイものだ。
それを口に出してしまえば、さすがの私も殺されそうだ。いや、良くて半殺しかな。なんて朝から物騒な事を考えながら、簡単に朝の身支度を済ませた。
家でご飯作る事なんて滅多にない。基本頼んだり、外で食べたり、冷蔵庫を開けても酒ばかり。
適当に袋からパンを一つ取り出すとコップに注いだ牛乳と一緒にバーカウンターに置く。少し高いイスに座って食べていると部屋の戸が開く音がする。
「竜くん、おはよう」
「んー、はよ・・・なに食べてんの?」
パンと牛乳を見せると目を丸くして、次の瞬間には笑っている。一応、蘭ちゃんを起こさないように声は小さめだ。
「ハハっ、ガキの飯だな。その席には似合わねぇぜ」
「うっさい。昼から呑んだくれる竜くんよりイイでしょ」
適当に返事をする竜くんは冷蔵庫を覗き、ペットボトルの水を取り出すと一口、二口と喉を潤す。目の前のカウンターにいると嫌でも視界に入る為、見てると首を僅かに傾げた。
「竜くん、また筋肉ついた?」
「お、わかるか。トレーニング増やしたんだよ」
「ふーん。私も同じ事したら筋肉つくかな」
「どうせ、オマエは続かねぇだろ。それにムキムキのAは見たくねぇよ」
そう言われ、あからさまに嫌そうな顔をされる。不満気に竜くんの前を通ってコップを流し場に置くと腕を掴まれて竜くんの視線がおりる。
「細ぇな。まず飯食え。あとは体力つけろ」
「それしたら、鍛えてくれる?」
「それとこれは話違ぇよ」
即答だ。竜くんに頼んだらいけるかなって思った私が間違いだった。口を尖らせていると頭にコンっと竜くんの手が当たり、視線を上げた。
「食べ終わったんなら着替えるぞ。自分で出来ねぇんだろ」
「わぁ、さすがお兄ちゃん♡じゃあお言葉に甘えてっ」
ラッキーと小さく飛び跳ねると甘い声でイスに掛けていたトレーナーを渡す。そして服と一緒に私の頬を片手で摘まれた。
「A?随分用意がいいなァ。最初からさせる気だったろ」
「えー、何のこと?ちょっとわかんないや」
とぼけたような言葉、舌を出して笑ってみせると眉尻を上げた竜くんの手が頭に伸びる。乱れた髪の毛、「仕返し」といった顔で竜くんは笑った。
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