第25話 ページ25
疲れきった私は真夜中に静かに起き上がった。隣を見下ろせば、ぐっすりの蘭ちゃん。
口を尖らせて「えいっ」と蘭ちゃんの額を軽く指で弾いた。そして、そそくさと逃げるようにベッドから降りる。
はあ・・・喉乾いた。水のも。
利き腕を固定されて動きずらい上に怪我のせいで痛い。冷蔵庫が遠く感じる。ソファも微妙な距離。だからといって戻るのも面倒。
・・・ここで寝るか。酒飲んだ日は外でも床でもどこでも寝るし、今更だよね。
その場にしゃがむと考えるのも面倒すぎてため息を吐いた。その時、肩を叩かれて声を上げそうになる口を塞がれた。
「ばかっ、兄貴が起きる。オレだよ、竜胆」
「あ、竜くんか・・・」
安堵の息を漏らせば、なんだと小さく笑った。黙っている竜くんに気づくと下から首を傾げた。
頭に手を乗せてくしゃっと撫でられる。薄暗い部屋の中で竜くんはどこか真剣な顔を一瞬浮かべた。
「もう、オマエに手出しはさせねェよ」
「・・・竜くん」
数秒間が空けば、竜くんに向けて「んっ」と片手を広げた。
「なァ・・・なに?抱けってこと?」
「竜くんの言い方、誤解を与えるから。カウンターまで運んで、ちなみにお姫様抱っこ希望ね」
「要求多いな。そもそも、何でんなとこ座ってんだよ」
「水飲みたくて、でも動くと痛くてさ。戻るのも面倒だし、ここで寝ようかと思ってたとこ」
「マジで適当に生きてんなァ」
なんて言いながら片腕で抱える竜くん。カウンターではなく、ソファに座らされる。コップに注がれた水、差し出されると頬を弛めて受け取る。
「んー、ありがとう。竜くんって何だかんだ優しいよねー」
隣に腰掛けた竜くんは片膝を立てると頬杖をついた。
「伊達に、どこかの兄貴と末っ子にパシられてきてねーから」
「えー、聞こえなーい」
「その身勝手さ、ホント兄ちゃんに似てるぜ」
水を飲んで喉を潤すとテーブルに小さく音を立てて置く。ため息をつく竜くんを見ると「へへっ」と笑ってみせた。
「少しは復活したかよ。さっきまでやつれてたろ」
「あー・・・蘭ちゃんに説教くらってたから。次、アレしたら家から出さないって言われた。マジで怖かった」
「兄ちゃんに余計なことするからだろ。学習しねーもんな」
「我慢できない性格なもので」
若干呆れた顔の竜くんは手を近づけると軽々と持ち上げた。落ちないように竜くんの首に腕を絡めると顔を近づけた。
「たまには怪我するのもいいね」
「バカ言ってねェで寝るぞ」
151人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ