第17話 ページ17
血の匂いがする。身体中が痛い、頭はまだ動くのに身体は動かない。こんなにボロボロなのは蘭と竜胆に出会った時以来だ。
あれ以来 ケガをする事も不良に絡まれる事も極端に減った。私はずっと2人に守られてる。
あの時から、蘭と竜胆は強くて、カッコ良かった。
「六本木のカリスマ」そう言われるだけある。
そんな2人が誇らしくて、自慢で。何をしてるのかも知ってる。けど、2人がするならそれが正義だ。疑問はない。
だってそうでしょ、蘭と竜胆は私の全てなんだから。
呻き声や鈍い音が部屋に響く。段々と呻き声は「たすけて」とか細い声に変わっていった。
身体に触れる手、声が聞こえてくると目を薄らと開けた。
「A」
「蘭・・・アイツらは・・・」
「ん?竜胆が外に捨ててきたぜ。あんな奴らと同じ空気吸わせる訳にはいかねぇからなー」
「アイツらが六本木に足を踏み入れる事はねぇから。安心しろ」
表情が戻ってる、元の2人だ。自分が怪我をするのはいいが、2人がいなくなるのはダメだ。とりあえず良かった。
「A、病院行くぞ」
「骨、折れてっからな。さすがに病院行かねェとな」
「そっか、わかった。ごめっ、立つから・・・少し待っ──」
動く手を支えに起き上がろうとすると、カクンっと力が抜けてバランスが崩れる。
「ムリすんな。オマエを抱えるぐらい何とでもねェから」
身体を支えて、軽く座らせてくれた蘭ちゃん。目の前では竜くんが布を広げて何かしてるのが見える。
「兄ちゃん、Aの口に何か噛ませて身体押さえてて。痛みで暴れると思うから」
「ん・・・A、オレの腕でも噛んでろ」
よくわからないまま、口に蘭ちゃんの太い腕を噛ませられると抱き込むように身体にも腕が回された。
「A。軽く固定してェから、骨の位置戻すぞ。医者なんかにベタベタ触れてほしくねぇしな」
骨を戻す、その言葉だけで痛い。肩が跳ねると眉根を寄せ、身体を押さえる為に回された蘭ちゃんの腕を握り締めた。
「んー?ほら、オレの腕噛んでろ。怒んねェから」
「すぐ終わらせるからな」
恐怖はある、手だって震えてる。だけど閉じかけた目を開いた。
動かないのは肘から下。肘の骨をやったのだろう。肩を動かすと、竜くんに向かって腕を差し出した。一思いにやれ、と思いを込めて。
「フっ。さすが、オレ達の妹だな。竜胆、時間かけさすなよ」
「当たり前だ。よしA、動かすぞ」
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