第16話 ページ16
額にスジが浮き出て目が据わる蘭ちゃん。頭から垂れて目の近くを伝う血を親指で拭われると、竜くんは骨を鳴らした。
「手ェ出した奴は誰一人生かしておけねェな?竜胆」
「ああ、当たり前だよ。兄貴。アイツら全員、生まれてきたの後悔させてやるよ」
スイッチが入ってる。いつものおちゃらけた2人はいない。離れていく、2人が私の手の届かない所へ行ってしまう。
手が微かに震えてる、堪らない不安感が私を襲った。それを拭い去るように力の入らない手を握って声を上げた。
「待って・・・アイツら、もう意識ないって。これ以上どうするの!?ねえ蘭ちゃん、竜くん」
「あぁ、そうだな。痛かったよなー。ちょっと待ってろ」
「すぐ終わらせるから、いい子にしてろよ」
ダメだ、私の声が届いてない。ソファの背もたれに背をつけるように座らされ、下から見えるのは既に表情のない2人。
ただでさえ手加減なしに殴られて虫の息の不良3人。このまま行かせたら確実に殺してしまう。
それだけはダメだ。アイツらを庇ってるんじゃない、2人の・・・いや私の為だ。
「蘭、竜胆・・・!」
そう声を掛けると2人は足を止めて振り返った。昔は、こう呼んでいた。忘れるはずないよね。私達が出会った時のこと。
動かない身体にムチ打って、真っ直ぐに震える手を伸ばした。
「殺しちゃ、駄目だよ。ネンショーになんか行かせないッ・・・絶対に。約束、思い出してよ」
2人が六本木を仕切ることになった六本木灰狂戦争。あの時、六本木京極の副総長の命を奪った2人は少年院に入れられた。
私は一人になった。昔の私なら一人でも、きっと平気だった。
だけど、2人から愛を貰って生きて。愛を知った。
一人は苦しくて堪らなかった。もうあんな思いはイヤだ。
クラっとする、血を流しすぎたんだ。起きていられない。身体が傾いていくと同時に声は小さくなっていく。
「もう・・・離れ離れは、嫌だよっ・・・蘭、竜胆」
身体は起こせない、だけど2人の声はしっかり届いていた。
「A。あぁ、そうだったな。
あの時・・・もう一人にしないって、約束したもんな」
「仕方ねぇな、ウチの姫の言うことは絶対だ。
アイツら命拾いしたなー、半殺しで許してやるよ」
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