高華の不死鳥第四章 (ページ33)

今日:1 hit、昨日:12 hit、合計:295,256 hit

第175話忘我の境ページ33

｢ああぁぁああ！腕が俺のうでがぁあぁぁ」

突如腕を押さえ、断末魔のような叫び声を上げながら崩れ落ちる賊の男達。

ﾖﾅ「落ちついて！腕はどうもなってないわ」

賊に駆け寄って声を掛ける姫様、賊の目の先を辿って行くと行き着く先は目を顕にしたシンアだ。

｢う･･･やめろ、寄るなっ、化物っ」

賊は酷く怯え、だけどシンアの眼から目を逸らせずにいる。

｢ぎゃああぁぁあ！あ、足がっ、足がっ」

｢もうやめてくれ！この女達は返すから、もう許してくれ！」

｢何が･･･何が起こってるんだ」

賊の倒れていく様に狼狽える村人たち。

シンアの眼を見た途端、皆が倒れた。

青龍、彼方まで見通す眼･･･きっと龍の眼の力で何らかの威圧を相手に与えている。

動く度に賊に殴られた箇所に痛みがはしる、随分と派手にやられたようだ･･･が、手を握り締め一歩ずつ足を運ぶ。

貴「止まりなさい、シンア」

シンアと賊の間に入れば、止めるように手を広げた。

貴「この人達は、ヨナ様を連れて行かないと言ってる。貴方は怪我をしているのよ。力を抑えて」

私の体を押してでも賊に近づこうとするシンア、その口元には笑みが浮かんでいる。

私がわかっていない、楽しんでるっ･･･力を使って人を殺そうとしているんだ。

シンアの様子がおかしい事に気づいた姫様もシンアの前に立つ。

ﾖﾅ「止めなさい！戻れなくなってしまう。シンアは力を使う事あんなに嫌がっていたでしょう!?」

声が届かない、あの心優しいシンアが姫様を押し飛ばしてまで先に進もうとしている。

押し飛ばされた拍子に倒れそうになる姫様を受け止めた。

貴「ヨナ様っ」

ﾖﾅ「私は大丈夫っ」

｢お、お前ら何ともないのか？
そいつの眼を見ると喰われちまうぞ！」

貴「喰われる？」

ﾖﾅ「あ、Aっ！」

考えるより先に体を動かすと手を伸ばし、シンアの顔を両手で包むように押さえた。

貴「シンア、私の眼を見なさい･･･!!私だけを、真っ直ぐに、喰いたければ喰うがいい。シンアが本当にそれを望んで喰って気が済むのならば喰うがいい、私は決して目を逸らさない･･･!!」

言葉の通りにシンアの眼から逸らさず、真っ直ぐに見据える。

貴「さあ！どうした･･･!?青龍(シンア)！！」

美しい瞳、本当に飲み込まれそう。

私は今、青い龍の餌になろうとしているのかもしれない。

私は今初めて彼の瞳を正面から見つめている、私はやっぱり･･･貴方の眼がとても好き。