愛してるのに愛せない (ページ17)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:13,569 hit

敗北 sideK ページ17

まさか、剛くんが銃を持っているなんて思っていなかった。

こんなに、人の道を外れてるなんて思わなかった。

俺の力だけでなんとかなると思ったのは、間違いだった。

俺の誤算のせいで彼女が自由を失うことになる。

それだけは避けたい。

俺の願いとは裏腹に彼女は俺を守るために空き地に来た。

『剛くん……やめて。何してるの？』

『俺さ、君が戻ってこないんだったら本当に光一殺そうと思ってんねん。』

『剛くん！！！こんなことしてタダで済むと思ってるの？』

『うるさいねん。本当に殺すで。じゃなければ戻ってこいや。』

『本当に……殺すの？』

『あぁ。殺すで。……今ならまだ間に合うけど。』

『……殺さないで。戻ってくるから。』

剛くんは、笑顔になった。

笑顔で彼女を抱きしめて、

『もう離さへん。ずーーーっと一緒やで。』

と言った。

『……剛くん。これは犯罪やで。俺が剛くんを捕まえたら、剛くんと彼女は一緒におられへん。』

『それは大丈夫や。埼玉県警の偉い人が揉み消してくれから。』

『じゃあ、行こっか。A。』

彼女は、俺を見て口パクでごめんと言った。

俺こそごめん。行かないで。

たったそれだけの言葉が言えない事が歯がゆくて、心底自分が嫌いになった。