ファッションオタク【 海月姫 】

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蔵之介.



『蔵子さん、凄くいい匂いがします……香水ですか？』


「……何だろうな。柔軟剤？」


『ふふ、安心します』






そう言って無防備に笑うAを見て、

少し罪悪感を感じた。


俺は、Aの苦手な男であることを隠して
その上抱き締めるなんてことを……

ごめん、仕方なかったんだ。これは。



不可抗力だけど、

ちょっとだけ嬉しいのは気のせいってことにして。






「ほら、泣きすぎ。目腫れてるし、隠してやるよ」


『へ、』


「ん？どうした？」






目元に触れると、

Aの長い前髪が揺れて
綺麗な瞳と赤い頰が露わになった。






『きゅ、急に近くなったので、びっくりして……すみません』


「あ、ああ。悪い。」






涙で潤んだ瞳は、

思っていたより破壊力抜群で。


速くなる鼓動を抑えるために、
距離を取ろうとしてメイクポーチを取る。

……何か俺、変だな。






「……あ、そうだ。

水道管の修理のために20万稼がなきゃなんないんだけどさ、フリーマーケットに参加しようと思ってるんだ」


『フリーマーケット？』


「おう。何か売れそうなものある？」


『そうですね……古いものですけど、ヘアアクセサリーとかならあるかもしれません。』


「出品してもいいものあったら教えてよ」






『分かりました！』

そうやって元気に返事をするAを見て、
俺はとあることを思いついた。

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