月永レオ__君の歪な心が見たい。 ページ7
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それは好奇心だった。
日が沈みかけの公園。もう子供は帰る時間。
そろそろ綺麗な月が見えそうな空。
今日は満月かな、と考えてなんとなく覗いた場所。
そこに彼はいた。
座り込んで地面に木の枝で必死に何か書いている。周りなんて何も見えないと言ったふうに。
そのまま彼の元へ進むと彼の世界を欠片を見た。五線譜に音符…それは歪な楽譜だった。しかし、彼はとても楽しそうに音楽を奏でている。
私が近づいた事に気が付いていないのがまだ彼は自分の世界に入っていた。なんとなく、彼と同じようにしゃがんでその歪な楽譜を詠む。
…それは楽しそうに笑っている彼からは聞こえないような哀しい音楽だった。けれど、静かに温かさを求めるようなそんな唄。
なるべく音を立てずに私は立ち上がってその場を去った。彼が気がついていたのか分からないけれどそれより私は自分の濡れてしまった目元を隠す事に必死だった。
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次の日もまた次の日も、彼はその公園で楽しそうに音楽を奏でていた。…1度見てしまった彼が創る小さな世界を私はもっと知りたいと思った。
だから今日こそは声をかけようと意気込んでいたけれど着いた目的地には誰も居なかった。
逢魔が時。子供たちは帰ってしまって私以外は誰もいない静かな公園。
…今日は三日月だったかな。
気持ちが萎んでいくのを感じながら公園の中にあるベンチに座った。彼はもうここには来ないかもしれない、我儘を言ってもいいなら…もう一度だけでいいから彼を見たい。彼の音楽を聞きたい。
少しだけ時間が過ぎるのを待っていたら三日月が見えてきていた。そろそろ帰ろうかな、とベンチから立ち上がった時、見慣れたオレンジ色の髪が揺れた。
『 えっ…? 』
「 お、やっと目が合ったな! 」
彼はライトグリーンの瞳を真っ直ぐに私を向けてそう言った。ニコニコと笑っている顔をしっかり見たのは初めてだ。
『 い、いつから…? 』
「 お前が空見上げてる時に来た!いつもはおれが見られてるから今日はおれが見てやろうと思ったのに、お前全然気が付かないんだな〜 」
『 なんで…… 』
言いたい事があったはずなのにそれ以上は音にならなかった。
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作者名:碧依 ねむ | 作成日時:2020年2月21日 0時